土地活用コラム

建物設備の不具合を理由として賃借人が賃料を支払わない場合の対応について

入居者から、

①ベランダに雨漏りがあり使用できない

②風呂場の蛇口やシャワー口から水が流れる

③備付けのエアコンの効きが悪い

との苦情がありました。

 

 

賃借人は、これらの不具合があるので修理が完了するまで賃料の支払いを拒絶すると言っています。このような場合、オーナーとしてはどのような対応をすべきでしょうか。

 

1.建物賃貸借契約における賃貸人と賃借人の義務

建物賃貸借契約では、賃貸人は、賃借人に対し、建物を使用収益させる義務を負い、賃借人は、建物の使用収益の対価として賃料を支払う義務を負います。そのため、賃借人は、賃貸借期間中は、賃貸借契約で取り決めた賃料を支払う義務があります。

契約で取り決めた賃料額は、賃貸人から一方的に増額したり、賃貸人から一方的に減額することは認められません。

 

 

2.建物の不具合のクレームとともに賃料を減額すると主張された場合

しかし、賃料は、賃貸目的物(賃貸建物)を使用収益した対価として支払うものですから、建物の使用収益の一部ができない場合にまで賃料の全額の支払いを求めるのは対価性を失うことになります。

そのため、民法は、「賃貸物の一部が滅失その他の理由により使用および収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用および収益をすることができなくなった部分の割合に応じて減額される」と定めています。(民法第611条1項)。

改正前は、「賃貸物の一部が賃借人の過失によらないで滅失した場合、賃借人はその滅失した部分割合に応じて、賃料の減額を請求することができる」と規定されていました。これまでは賃貸物の一部滅失事由が「滅失」した場合だけでしたが、最近の民法の改定で、賃貸物の一部滅失事由が「滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合」に拡大されているので、注意を要します。しかし、認められているのは、あくまで「使用および収益することができなくなった部分の割合」についてです。このような場合に、賃料の全額を支払わないことが認められるわけではありません。

 

3.使用収益することができなくなった場合とは?

賃料の減額は、単に「使い勝手が悪い」という不便が生じただけではなく、建物の一部の使用収益を妨げる程度のものでなければ認められないのが一般的です。例えば天井から雨漏りがするとか、給湯器が故障してお湯が使えないなどです。設問だと、

 

 

4.どの程度の減額が必要となるのか?

民法では単に「使用および収益をすることができなくなった部分の割合に応じて減額」とされていますが、実際にいくらの減額とすべきなのかは、一概に言うことはできません。基本は契約面積を基準として、使用ができなくなった範囲の面積と、使用できなくなった日数を日割りで算出することになります。上記③のエアコンの例だと、設置部屋の面積とエアコンが使えなかった日数から算出することになります。

 

5.賃借人が賃料を支払わない場合は?

このように設備の不具合等を理由に、借主が賃料の支払いを拒絶あるいは一部減額が認められるためには、その不具合が、建物の使用収益を妨げるほどのものと認められる程度のものであることが必要です。

にもかかわらず、賃借人が催告しても賃借人が賃料を全額または極一部しか支払ってこない場合には、賃借人の賃料不払いを理由とする賃貸物の建物賃貸借契約の解除をし、賃借人に対する建物の明渡しの請求することになります。

賃借人からの理不尽な要求については、毅然とした対応をすることが大事だと思われます。

 

 

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監修者:戸田 好政
役職 企画本部副本部長
資格 不動産コンサルティングマスター 宅地建物取引士 賃貸不動産経営管理士 
   管理業務主任者 2級FP技能士
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