土地活用コラム
賃貸物件の相続|スムーズな手続きと賢い活用方法
マンションやアパートなどの賃貸物件を所有している人が亡くなった場合、どのように相続手続きを進めればよいのでしょうか。遺言書の確認や遺産分割の話し合いなど、やるべきことが多くて悩んでいる方も多いでしょう。
そこで本記事では、賃貸物件の相続で最初にすべきことや手続きの流れ、賃貸物件の賢い活用方法などをご紹介します。賃貸物件の相続でお悩みの方は、参考にしてみてください。
賃貸物件の相続で最初にすべきこと
賃貸物件の相続においては、遺言書や相続人の確認、相続財産の調査などが必要です。それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。
遺言書の確認
賃貸物件の所有者が亡くなったときは、まず遺言書を確認する必要があります。遺言書の有無やその内容によって、相続手続きの流れが変わるからです。遺言書がある場合は、原則としてその内容が優先されます。ただし、記載内容に不備がある場合などは、遺言書が無効となる可能性があるため注意しましょう。
逆に遺言書がない場合は、遺産分割協議によって誰が賃貸物件を相続するのかを話し合います。遺産分割協議については、後述します。
相続人の調査
相続人の調査では、財産の相続ができる権利を有する人を確認します。被相続人の戸籍謄本や改製原戸籍謄本、相続人の戸籍謄本などを集めて、お互いの関係性を確認しましょう。
財産を相続できる法定相続人の範囲は、民法によって定められています。まず被相続人に配偶者がいる場合、配偶者は常に法定相続人に該当します。それ以外の人で、相続が優先される順位は、以下の通りです(※)。
- 第1順位:被相続人の子ども
- 第2順位:被相続人の直系尊属(親や祖父母など)
- 第3順位:被相続人の兄弟姉妹
例えば、被相続人に配偶者と子どもがいた場合は、それぞれが半分ずつ財産を相続できます。分割の割合については遺産分割協議でも活用するため、基本的な仕組みだけでも覚えておきましょう。
※参考:国税庁.「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」,(参照2025-05-13).
相続財産の調査と評価
被相続人が亡くなったときは、相続財産の調査も必要です。相続財産の調査では、被相続人が所有していた財産を明確にします。アパートやマンションといった賃貸物件、現金、自動車、貴金属などが相続財産に該当するため、不動産の契約書類や通帳などを基に調査を進めましょう。
調査の中で、プラスの財産だけではなく、借金などのマイナスの財産が見つかるケースもあります。相続したくない場合は、相続放棄を検討しましょう。
ここまで解説した通り、相続人や相続財産の調査をしっかりと行ってから、遺産分割協議に進むことが大切です。自分で調査するのが難しい場合は、司法書士や弁護士などの専門家に依頼する方法もあります。
賃貸物件の相続手続きの流れ
ここからは、賃貸物件の相続手続きの流れについて詳しくご紹介します。
遺産分割協議
遺産分割協議とは、相続財産をどのように分けるかを決める話し合いのことです。相続人が2人以上いるときは、遺産分割協議を通して公平に相続できるよう配慮しましょう。
遺産分割の方法としては、以下の4つがあります。
- 現物分割:不動産や現金などを物理的に分割する
- 代償分割:財産を相続した人が他の相続人に代償金を払う
- 換価分割:財産を売却して現金化してから分割する
- 共有分割:財産を複数の相続人で共有する
例えば現物分割の場合は、配偶者が賃貸物件を、子どもが現金を相続するなど、財産を物理的に分割します。また、換価分割の場合は不動産などを一度売却して現金化するため、複数の相続人で公平に分割することが可能です。
どの方法を選ぶべきかは相続財産の種類や相続人の意向によって異なるため、しっかりと話し合いを行いましょう。合意した記録を残すために、遺産分割協議書を作成しておくことも重要です。
相続登記
賃貸物件の相続人が決まったら、相続登記をする必要があります。相続登記とは、不動産の登記名義を被相続人から相続人へと変更することです。相続登記は2024年4月より義務化されたため、3年以内に変更申請をしなければなりません。
相続登記は、賃貸物件がある住所を管轄する法務局にて行います。窓口での申請だけではなく、郵送申請や電子申請もできます。
※参考:東京法務局.「続登記が義務化されました(令和6年4月1日制度開始)~なくそう 所有者不明土地 !~」,(参照2025-05-13).
各種名義変更(賃貸借契約、管理会社など)
各種の名義を変更することも欠かせません。マンションやアパートに入居者がいる場合は、まず賃貸借契約の名義を変更しましょう。
賃貸物件の所有者が死亡したとしても、基本的に賃貸借契約はそのまま継続されます。しかし、契約上の名義をそのままにしておくと、契約関係が曖昧になったり、振込先が分からなくなったりするため、早めに名義変更しましょう。
管理会社などと契約している場合は、すぐに連絡して名義を変更してもらう必要があります。
相続税の申告と納税
賃貸物件を相続したときは、相続税を納税する必要があります。相続税の金額は、賃貸物件の評価額と税率をかけ合わせ、控除額を引くことで決定されます。
例えば、賃貸物件の評価額が1,000万円超から3,000万円以下だった場合、税率は15%、控除額は50万円です(※)。
※参考:国税庁.「No.4155 相続税の税率」,(参照2025-05-13).
賃貸物件を相続した場合の活用方法
賃貸物件を相続したときの活用方法としては、賃貸経営の継続や売却、自己居住などが挙げられます。それぞれの活用方法をご紹介します。
そのまま賃貸経営を続ける
賃貸経営が順調なら、現状を維持しながら家賃収入を得るのがおすすめです。例えば、満室状態を維持できている場合や、築年数が浅く入居者がすぐに見つかりそうな場合は、無理に他の方法を計画する必要はありません。
リフォーム・リノベーションして賃貸する
アパートやマンションが古くなっており、入居者が集まりにくい場合は、リフォームやリノベーションを検討するのも一つの方法です。壁紙やフローリングの貼り替え、設備の更新、間取りの変更などを検討するとよいでしょう。
賃貸物件の状態によっては、屋根や外壁の補修など、大規模修繕が必要なケースもあります。ただし、大きな工事を実施すると多額の費用が発生するため、予算やニーズなども含めて総合的に検討しましょう。
売却する
賃貸経営が難しい場合や、老朽化により入居者が集まらない場合などは、売却を検討します。建物を解体して更地にしてから売却する方法や、そのまま売却する方法などがあります。売却を検討するときは、複数の業者からの見積もりを比較したり、事前に相場を確認したりすることで、納得のいく売却につながりやすくなるでしょう。
自己居住する
賃貸経営や売却以外の選択肢としては、自己居住するのも選択肢の一つです。具体的には、相続人自身が住む、親戚や友人に貸し出すなどの方法があります。マンションやアパートの一室を自分が使い、その他の部屋で賃貸経営を行うこともできます。
このようにさまざまな方法で相続した賃貸物件を活用できるため、状況や目的に合った方法を選択しましょう。
まとめ|賃貸物件の相続を理解して適切な選択をしましょう
賃貸物件の所有者が亡くなったときは、遺言書の確認や相続財産の調査、遺産分割協議などが必要です。相続登記や相続税の納税も忘れないようにしましょう。
なお、相続した賃貸物件はさまざまな形で活用できます。賃貸経営や売却などの選択肢があるため、しっかりと検討して自分に合った方法を検討しましょう。
賃貸物件の相続や活用方法で悩んでいる場合は、貝沼建設株式会社にご相談ください。独自のインターネットワークにより、相続から不動産活用までトータルにサポートします。お客さまのニーズに合わせた提案を心掛けているため、お気軽にご連絡ください。
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