土地活用コラム
不動産相続で失敗しないためには?知っておきたい基礎知識と対策法
不動産は、相続の際に家族間でのトラブルや予想以上の税負担につながりやすい財産です。高齢化の進行により相続件数は年々増加しており、空き家や所有者不明土地の問題は、社会的にも大きく取り上げられています。さらに2024年4月からは相続登記の申請が義務化され、放置していた不動産の扱いが一層厳格に管理されるようになりました。
本記事では不動産相続の基本的な流れから、評価や費用の考え方、トラブルを避けるための対策、専門家の活用方法まで解説します。相続に早いうちから備えたい方や、すでに具体的な対応が迫られている方にとって、実務に役立つ内容をお届けします。ぜひ最後まで読んで参考にしてみてください。
※参考:法務省.「不動産を相続したらかならず相続登記! 令和6年4月1日から義務化されました」,(参照2025-09-23).
不動産相続対策が重要視されている理由
不動産相続が社会的に注目される背景には、人口減少と高齢化があります。相続発生件数が増える一方で、不動産は現金と異なり分割が難しく、遺産分割協議が長期化したり相続人同士の対立が深刻化したりするケースが珍しくはありません。そのため近年では事前の不動産相続対策が重要視されています。
さらに2024年4月からは相続登記が義務化されたことから、相続を知った日から3年以内に登記申請を行わなければ過料10万円以下が科される可能性も出てきました。こうした制度改正により、不動産相続を放置できない状況が明確になったともいえるでしょう。
加えて、相続税の基礎控除額が縮小されたことで多くの家庭に課税が及ぶようになり、資金計画の必要性が一層高まっているのが現状です。
※参考:法務省.「不動産を相続した方へ ~相続登記・遺産分割を進めましょう~」,(参照2025-09-23).
※参考:国税庁.「相続税 相続税の仕組み」,(参照2025-09-23).
不動産相続の仕組み
不動産相続の一般的な流れは、おおまかに「相続開始」から「遺産分割協議」「登記」「税務申告・納付」へと進みます。
まず被相続人が亡くなると、相続人を確定させるために戸籍を取り寄せ、相続財産を調査するのが一般的です。その上で相続人全員で遺産分割協議を行い、不動産をどのように承継するかを決定します。
合意内容がまとまれば、不動産の相続登記を行い名義を新しい所有者に変更します。さらに、不動産を含む遺産の合計が基礎控除額を超える場合には、10カ月以内に相続税の申告・納付が必要です。
なお相続放棄や限定承認を希望する場合には、相続開始を知った日から3カ月以内に家庭裁判所へ申述する必要があるため、早めの判断が欠かせません。不動産相続は期限が複数絡むため、計画的な進行が重要です。
※参考:国税庁.「No.4205 相続税の申告と納税」,(参照2025-09-23).
※参考:裁判所.「相続の放棄の申述」,(参照2025-09-23).
相続登記義務化について
先述した相続登記の義務化は、所有者不明土地の増加を防ぐために導入されました。これにより2024年4月以降に発生した相続では、相続人が不動産の取得を知った日から3年以内に登記申請を行わなければなりません。正当な理由なく怠った場合には、10万円以下の過料が科される可能性があります。
また相続関係者が多く協議が整っていない場合でも、まずは「相続人申告登記」という簡易な方法で義務を履行することが可能です。この制度により相続登記を放置するリスクは大幅に増したといえるでしょう。そのため早い段階で財産調査や協議を進めることが求められています。
※参考:法務省.「不動産を相続した方へ ~相続登記・遺産分割を進めましょう~」,(参照2025-09-23).
住所・氏名変更登記の義務(2026年予定)について
相続登記に続き、2026年4月からは住所や氏名が変わった場合の変更登記も義務化される予定です。所有者は、変更があった日から2年以内に登記を行わなければならず、怠ると5万円以下の過料が科される可能性があります。不動産を円滑に管理・売却するためには、登記情報を常に最新の状態に保つことが欠かせません。
※参考:法務省.「住所等変更登記の義務化特設ページ」,(参照2025-09-23).
不動産相続のよくある課題と解決方法
不動産相続では、共有状態が長期化することや、空き家となった実家の維持コストが積み重なることが課題とされやすいです。どのようにするかという意思決定が遅れるほど負担が増すため、分割方法や処分の選択肢を早めに検討する必要があります。主な解決方法には、次の2つが挙げられます。
【解決方法①】不動産の分割(共有・換価・代償分割)
代表的なのは、不動産を分割するという解決方法です。不動産の分割には大きく3つの方法があります。
まず「共有」は、相続人全員が持分を持つ形ですが、売却や修繕の意思決定に全員の同意が必要となり、将来的なトラブルの火種になりやすい方法です。
「換価分割」は不動産を売却し現金を相続人同士で分ける方法で、平等性を保ちやすい一方、思い入れのある自宅を手放さなければならないデメリットがあります。
「代償分割」は特定の相続人が不動産を取得し、代わりに他の相続人へ金銭を支払う方法で、共有状態を避けられる点がメリットです。ただし代償資金の確保が難しい場合もあるため、専門家の助言を得ながら適切な方法を検討する必要があります。
【解決方法②】相続土地国庫帰属制度の活用
相続した不動産が空き家や使い道のない土地の場合、維持管理が重荷になることがあります。そのようなときの選択肢の一つが、2023年4月に始まった「相続土地国庫帰属制度」です。
この制度を利用すると、一定の条件を満たす土地を国に引き渡せるようになります。ただし、建物や権利関係が複雑な土地は対象外となり、申請時には負担金の納付が必要です。
国庫帰属制度は、管理コストや将来のトラブルを回避する手段となるでしょう。しかし利用できるかどうかの判断には専門的な知識が必要となるため、事前に法務局や専門家に相談することが重要です。
※参考:法務省.「相続土地国庫帰属制度について」,(参照2025-09-23).
知っておきたい不動産評価の基礎知識
相続税額や相続人同士の公平性を判断するには、不動産の評価を正しく理解することが欠かせません。土地や建物にはそれぞれ評価方法があり、算出額によって税負担や分割方法の選択に大きな影響が出ます。
路線価・倍率の調べ方
土地の評価には「路線価方式」と「倍率方式」があります。都市部や市街地では、国税庁が毎年公表する路線価図を基に計算するのが一般的です。一方で、地方や路線価の設定がない地域では、固定資産税評価額に一定の倍率を掛けて評価する倍率方式が用いられます。
なお地形や接道状況によっては、奥行価格補正や不整形地補正などが行われるため、同じエリアでも評価額が大きく変わることがあります。
※参考:国税庁.「No.4604 路線価方式による宅地の評価」,(参照2025-09-23).
※参考:国税庁.「No.4606 倍率方式による土地の評価」
建物評価と賃貸不動産の留意点
相続の際、建物は固定資産税評価額をそのまま相続税評価額とするのが基本です。木造よりも鉄筋コンクリート造の方が耐用年数が長いため、評価額も高くなる傾向にあります。
また賃貸物件については借家権割合を考慮した評価減が認められる場合があり、同じ建物でも自用か賃貸用かで評価額が変わります。こうした評価の違いを理解しておくことは、節税や遺産分割の観点で非常に重要です。
※参考:国税庁.「No.4602 土地家屋の評価」,(参照2025-09-23).
不動産相続で発生する主な費用
不動産相続では、税金や各種手続きに関わる費用が発生します。まず相続税については、基礎控除額「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人」を超える場合に課税対象となり、申告・納付は10か月以内に行わなければなりません。
また不動産登記には登録免許税や司法書士への報酬、不動産を売却するに当たり譲渡所得税や仲介手数料などがかかります。これらの費用は状況によって大きく変動するため、事前に専門家と相談し、全体像を把握しておくことが重要です。
※参考:国税庁.「財産を相続したとき」,(参照2025-09-23).
※参考:国税庁.「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」,(参照2025-09-23).
事前にできる不動産相続のトラブル回避策
不動産相続では、トラブルを避けつつ税負担を抑える工夫が欠かせません。代表的な方法として遺言書の活用、生前贈与の検討、不動産の売却や賃貸などの活用策があります。状況に応じてこれらを組み合わせることで、家族全員が納得できる相続につなげることが可能です。
遺言書を活用する
遺言書は、不動産相続におけるトラブルを未然に防ぐ有効な手段の一つです。相続人の合意に頼らず、被相続人の意思を明確に残せるため、遺産分割協議の紛争化を避けやすくなります。
形式には自筆証書遺言と公正証書遺言があり、自筆証書遺言は費用を抑えられますが、形式不備による無効リスクがあります。一方で公正証書遺言は公証役場で自筆証書遺言書保管制度作成するため、法的に有効性が高く、原本が保管される安心感があるでしょう。2020年からは自筆証書遺言を法務局で保管できる「自筆証書遺言書保管制度」も始まり、利用しやすさが向上しています。
相続人間の争いを避けたい場合には、専門家に相談の上で公正証書遺言を作成しておくのが望ましいでしょう。
※参考:法務局.「自筆証書遺言と公正証書遺言の違い」,(参照2025-09-23)
※参考:法務省.「自自筆証書遺言書保管制度」,(参照2025-09-23)
生前贈与を行う
生前贈与は不動産相続の負担を軽減する有効な方法です。特に毎年110万円までの基礎控除を利用する「暦年贈与」は広く活用されています。さらに、住宅取得資金の贈与や祖父母などからの教育資金贈与には非課税制度が設けられており、条件を満たせば数百万円から1,000万円単位で非課税枠を利用できる場合もあります。
ただし2024年以降は、暦年贈与の持ち戻し期間が従来の3年から7年に拡大され、相続対策としての難易度が高まっているという点も見逃せません。制度の詳細や適用可否は時期や個々の事情によって異なるため、実際に活用する際には税理士などの専門家に確認するのが望ましいです。
※参考:国税庁.「No.4402 贈与税がかかる場合」,(参照2025-09-23)
※参考:国税庁.「祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた 場 合 の 贈 与 税 の 非 課 税 制 度 の あ ら ま し」,(参照2025-09-23)
※参考:国税庁.「令和5年 相続税及び贈与税の税制改正のあらまし」,(参照2025-09-23)
不動産の売却・活用を検討する
不動産の売却や活用は、資産を次世代に円滑に引き継ぐための有力な選択肢といえるでしょう。
相続した不動産は、必ずそのまま保有しなければならないわけでありません。売却して現金化し、相続人同士で公平に分ける方法は実際のところよく見られます。
また相続開始前に不動産の賃貸経営を始めておくことで、相続税評価額を抑えられる場合もあります。特に貸家やアパート経営を行っている場合は、借家権割合による評価減が適用されることがあるため、相続税の負担を軽減できるかもしれません。ただし空室リスクや維持管理費用といった経営上の課題も伴うため、十分なシミュレーションと専門家の助言が必要です。
まとめ
不動産相続は、登記義務化や住所変更登記の新制度により、従来以上に放置できない課題となりました。評価方法や発生する費用を理解し、遺言や生前贈与、売却や活用といった具体的な対策を講じることが、円滑な相続の実現につながるでしょう。また税理士や司法書士といった専門家の助言を早めに受けることで、相続人同士のトラブルや余計な税負担を避けられるようになるはずです。
相続は突然訪れることも多いですが、準備次第で大きく結果が変わるものです。貝沼建設では将来の不動産相続を心配している方に対し、今からできることを一緒に考え、お一人おひとりに合った選択肢をご提案します。もちろん、直近で対策を必要としている方のご相談もうかがっておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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