土地活用コラム
アパート経営が相続税対策になる理由は?節税効果やメリット・デメリットを解説
アパート経営は、相続税対策として効果が期待できる方法の一つとされています。アパート経営をすることが、どうして相続税を抑えることにつながるのでしょうか。
本記事では、アパート経営が相続税対策になる理由や期待できる節税効果、アパート経営のメリット・デメリットを解説します。アパート経営は相続税対策に適した方法ですが、デメリットも把握しておくことが大切です。アパート経営がご自身に合った相続税の節税方法かどうかを見極めるために、本記事を参考にしてみてください。
アパート経営が相続税対策になる理由
「どうしてアパート経営で、相続税が抑えられるのだろう」と疑問に感じている方もいるでしょう。まずは、アパート経営が相続税対策になる4つの理由を解説します。
賃貸物件は相続税評価額が下がるから
賃貸物件の場合、土地や建物の相続税評価額が下がることが、アパート経営が相続税対策になる理由の一つです。
賃貸アパートや賃貸マンション、戸建て賃貸、貸店舗、貸しビルなど、他人に有償で貸し出している物件は「収益物件」と呼ばれます。収益物件の場合、自宅で使用している土地や建物よりも、相続税評価額が低くなるのが一般的です。相続税評価額とは、相続税を算出する際に基準とされる財産価値を意味します。
相続税評価額が低ければ、相続税も連動して下がるため、経営しているアパートを相続する際は、相続税額を抑えることが可能です。
経営するアパートの相続税評価額がどのような仕組みで下がるのか、それぞれ見ていきましょう。
土地の相続税評価額
賃貸アパートが建っている土地は、土地の利用区分が「貸家建付地」になります。貸家建付地とは、賃貸物件が建っている土地のことです。
貸家建付地の場合、その土地に建っている物件を借りている人がいるため、自分が住んでいたり事業に使っていたりする建物が建っている自用地と比較すると、自由に使うことができません。そのため、貸家建付地には相続税評価額に以下が適用され、自用地の評価額よりも低くなります。
- 借地権割合:地域によって30〜90%
- 借家権割合:全国一律で30%
- 賃貸割合:満室時を100%とし、入居率を示す割合
借地権割合は、国税庁が公表する路線価図(道路に面する土地1m²の評価額)に記載のあるアルファベットに基づいて、割合が決められています(※)。
※参考:国税庁.「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」,(参照2025-04-28).
建物の相続税評価額
建物を建てた場合、相続税評価額は新築の本体工事費の60%程度です。そのため、実際に支払った費用より評価額が抑えられます。
加えて、賃貸アパートのような収益物件の相続税評価額は、自宅として住んでいる建物よりも相続税評価額が低くなります。自宅として住んでいる建物の場合、固定資産税評価額と相続税評価額が同額です。しかし、賃貸物件の場合は、固定資産税評価額に借家権割合と賃貸割合が考慮されるため、自宅として住んでいる建物よりも相続税評価額が少なくなります。
建物の場合も、借家権割合は全国一律30%です。賃貸割合も満室時を100%とし、入居率によって算出します。
小規模宅地等の特例が適用される可能性があるから
小規模宅地等の特例が適用される可能性があることも、アパート経営が相続税対策になる理由の一つです。
小規模宅地等の特例とは、被相続人(亡くなった方)が自宅または事業用に使っていた土地や、経営していた賃貸物件が建っていた土地で、一定条件を満たす場合、相続税評価額が減額される制度のことです。経営しているアパートが建っている土地の場合、200m²を限度面積として、土地の相続税評価額が50%減額されます(※)。
建物に対する減額はありませんが、土地の相続税をさらに抑えることができるため、より高い節税効果を得られるでしょう。
※参考:国税庁.「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」,(参照2025-04-27).
ローンの残債に債務控除が適用されるから
ローンの残債に債務控除が適用されることも、アパート経営が相続税対策になる理由の一つです。債務控除とは、被相続人が残したローンや借金、未払金などの債務を、相続財産から差し引ける制度を指します(※)。
アパート経営をする際は、ローンを組むのが一般的です。相続する際にローンに残債があった場合、残債が債務控除の対象となり、相続財産から差し引かれるため、相続税額を抑えることができます。
※参考:国税庁.「No.4126 相続財産から控除できる債務」,(参照2025-04-28).
相続税の納税資金が作れるから
相続税の納税資金が作れることも、アパート経営が相続税対策になる理由です。
アパート経営をすると、毎月家賃収入を得られます。健全なアパート経営をしていれば、家賃収入からローンの返済や維持・管理費を差し引いても、手元にお金が残ることが多いです。
被相続人がアパート経営をしながら家賃収入を蓄えておけば、相続が発生した際に貯めたお金を納税資金にできます。
アパート経営による節税効果は?
アパート経営による節税効果を同額で現金を相続した場合と比較してみましょう。
現金で相続した場合
1億3,000万円を現金で相続する場合、相続税評価額は1億3,000万円です。相続税には3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)の基礎控除があるため、法定相続人が子2人のみの場合の基礎控除額は4,200万円になります(※1)。
課税遺産総額は「1億3,000万円 - 4,200万円 = 8,800万円」です。
法定相続人は子2人のため、1人当たりの法定相続分に応じた取得金額は、「8,800万円 ÷ 2 = 4,400万円」になります。法定相続分に応ずる取得金額が3,000〜5,000万円以下の場合、相続税の税率は20%で、控除額は200万円です(※2)。「4,400万円 × 20% - 200万円 = 680万円」となり、1人当たり680万円の相続税が発生します。
1億3,000万円を現金で相続する場合、相続税の合計は「680万円 × 2人 = 1,360万円」です。
※1参考:国税庁.「相続税」,(参照2025-04-27).
※2参考:国税庁.「No.4155 相続税の税率」,(参照2025-04-27).
経営中のアパートを相続する場合
次に以下の条件でアパート経営をした場合の、節税効果を見ていきます。
- 相続人:子2人
- 土地の相続税評価額:1億円
- 建物の本体工事費:1億円(自己資金3,000万円 + 借入金7,000万円)
- 建物の固定資産税評価額(本体工事費の60%と仮定):5,000万円
- 借入金:7,000万円
- 借地権割合:60%
- 借家権割合:30%
- 賃貸割合:100%
- 小規模宅地等の特例の適用:なし
土地の相続税評価額は、「自用地としての相続税評価額 ×[1 − (借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)]」で算出できるため、「1億円 × (1 − 60% × 30% × 100%)= 8,200万円」です。
建物の相続税評価額は、「建物の固定資産税評価額 ×(1 − 借家権割合 × 賃貸割合)」で計算し、「5,000万円 × (1 − 30% × 100%)= 3,500万円」となります。
土地・建物の相続税評価額は「土地の相続税評価額 + 建物の相続税評価額」のため、「8,200万円 + 3,500万円 = 1億1,700万円」です。借入金をしてアパートを建てているため、遺産総額は「1億1,700万円 - 7,000万円 = 4,700万円」となります。
法定相続人が子2人の場合の基礎控除額は4,200万円となるため、課税遺産総額は「4,700万円 - 4,200万円 = 500万円」です。1人当たりの法定相続分に応じた取得金額は、「500万円 ÷ 2 = 250万円」になります。
法定相続分に応ずる取得金額が1,000万円以下の場合、税率は10%で控除はありません(※)。1人当たりの相続税額は、「250万円 × 10% = 25万円」となり、相続税の合計は「25万円 × 2人 = 50万円」です。
このように同じ1億3,000万円を相続する場合でも、現金のまま相続するか、アパート経営を行って相続するかで、相続税が1,310万円も変わってきます。
※参考:国税庁.「No.4155 相続税の税率」,(参照2025-04-27).
アパート経営で相続税対策をするメリット
アパート経営で相続税対策をする大きなメリットは、相続税を大幅に圧縮できることです。家賃収入も得られるため、生活を安定させやすく、将来に備えることもできるでしょう。
不動産所得を得られるアパート経営では、減価償却を利用できます。減価償却とは、長期間保有する資産を法定耐用年数に応じて振り分け、年ごとに経費に計上できる制度です(※)。この制度があるため、不動産を取得しても所得税が大幅に増加することはほとんどありません。また不動産所得以外に給与所得などがあり、帳簿上の赤字となる場合、所得税・住民税を大きく抑えられる可能性があります。
※参考:国税庁.「No.2100 減価償却のあらまし」,(参照2025-04-28).
アパート経営で相続税対策をするデメリット
アパート経営で相続税対策をするデメリットは、空室リスクがあることです。
立地や老朽化、競合などの影響により、アパート経営をしても、思うように入居者が集まらないことがあります。空室が増えると家賃収入が予定よりも少なくなり、最悪の場合は赤字経営になってしまうこともあるでしょう。
空室が続けば家賃を下げざるを得ず、さらに収入が減ってしまう恐れもあります。収入が減っても借入金の返済や修繕費、維持費などは発生するため、マイナスが大きくなる可能性も高いです。また家賃の不払いや入居者のトラブル、災害リスクなど、さまざまなリスクもあります。
このようなデメリットをカバーするためには、信頼できる建築会社や管理会社と連携し、空室リスクを避けた経営を目指す必要があります。加えて、将来を見据えた資金計画・修繕計画を立て、無理のないアパート経営を行うことが大切です。
アパート経営は信頼できるパートナー選びが重要
相続税の節税効果が見込めるアパート経営ですが、入居者が集まらなければ、期待する収入が得られず、赤字が続いてしまうリスクもあります。それ以外にもさまざまなリスクが発生するため、リスクを十分に考慮した経営戦略を立てることが大切です。専門知識やノウハウも必要になるため、アパート経営で相続税対策をするなら、信頼できるパートナーを見つけて相談しましょう。
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