土地活用コラム

アパートの相続対策をするなら生前に!相続との違いや生前贈与のメリット・デメリットについて解説

アパートを所有している方の中には、「節税対策に生前贈与をしたい」という方もいるはずです。アパートを生前贈与すると、どのようなメリットが得られるのでしょうか。

本記事では贈与の概要やアパートの生前贈与のメリット・デメリット、贈与税の課税制度について解説します。生前贈与をするか悩んでいる方は、本記事を参考にして、生前贈与が適しているかどうかを見極めましょう。

 

そもそも贈与とは?

贈与とは契約の一種です。贈与者(贈与をする人)が、自分の財産を相手に無償で与える意思を示し、受贈者(贈与を受ける人)が、それを受け入れることで、契約が成立します(※1)。書面だけでなく、口頭で契約を成立させることも可能です。

家族以外に財産を無償で与える場合も、贈与に該当します。一定の条件に当てはまる場合、受贈者には贈与税の納税義務が生じます(※2)。

※1参考:e-GOV法令検索.「民法」.“第五百四十九条”,(参照2025-04-28).
※2参考:e-GOV法令検索.「相続税法」.“第二十一条” ,(参照2025-04-28).

贈与の種類

贈与を大きく分けると、「生前贈与」と「死因贈与」の2種類があります。

生前贈与とは、贈与者が生きている間に財産を贈与することを指します。一般的に贈与というと、生前贈与を指すことが多いです。

一方、死因贈与とは、贈与者が亡くなったことで効力が生じる贈与です。死因贈与の場合、「要介護となったときに介護をしてくれたら、亡くなった際に財産を無償で与える」というような条件を付けることがあります。このような条件付きの死因贈与は、「負担付死因贈与契約」と呼ばれます(※)。

※参考:e-GOV法令検索.「民法」.“第五百五十三条, 第五百五十四条”,(参照2025-04-28).

相続との違い

相続とは、財産を持つ人の死亡によって、法定相続人(法律で定められた相続人)に財産を引き継ぐ権利が発生することを指します。相続の場合、財産を引き継ぐ際に、被相続人(財産を所有している人)と相続人の合意は必要ありません。

法定相続人が2人以上いる場合、法律で相続の割合が決められています(※)。ただし、遺言を残せば法定相続人以外に、自由に財産を譲ることは可能です。しかし、法定相続人が最低限引き継げる財産の割合は定められているため、遺言によって法定相続人が財産をもらえなかった場合は、申し立てを行うことができます。

一方、生前贈与は、事前に契約を交わしていれば、親族以外でも好きなように財産を与えることができます。財産を与える際には、贈与者と受贈者双方の合意が必要です。合意の上で成り立つ契約であるため、契約成立後、一方的に受け取りを拒否することはできません(※)。

相続には相続税、生前贈与には贈与税がかかります。

※参考:国税庁.「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」,(参照2025-04-28).
※参考:e-GOV法令検索.「民法」.“第五百五十条”,(参照2025-04-28).

 

アパートを生前贈与するメリット

アパートの生前贈与によるメリットを4つ紹介します。

贈与財産の評価額が低くなる

アパートを生前贈与するメリットは、贈与財産の評価額が低くなることです。

現金の場合、贈与する現金から基礎控除110万円 を引いた額が課税対象となりますが、アパートの場合は固定資産評価額が課税対象となります。固定資産評価額は、時価の5〜7割程度 です(※)。

同等の価値の現金とアパートの建物を比較すると、アパートの生前贈与の方が財産の評価額が低くなるため、贈与税を抑えられます。

※参考:国税庁.「No.4402 贈与税がかかる場合」,(参照2025-04-28).

贈与後の家賃収入は受贈者の収入になる

贈与後の家賃収入が受贈者の収入になることも、生前贈与のメリットです。

例えば家賃収入が150万円あり、贈与せずに親がアパート経営を10年続けた場合、単純計算で1,500万円財産が増えます。親が亡くなった際に相続財産が増えるため、相続税が高くなってしまうでしょう。

親が子どもに贈与した場合、親の財産は増えないため、結果的に相続税を抑えることにつながります。また、贈与を受けた子どもが家賃収入を貯めておけば、相続税を納める際の資金として活用可能です。

所得税を抑えられる可能性がある

所得税を抑えられる可能性があることも、アパートの生前贈与のメリットです。

アパートを生前贈与すると、贈与者の所得が減るため、所得税を抑えられます。ただし、受贈者の所得額にもよるため、生前贈与によって贈与者と受贈者の所得税額の合計が低くなるかを、試算することが大切です。

特定の人を受贈者として指定できる

特定の人を受贈者として指定できることも、生前贈与のメリットです。

相続の場合、原則として法定相続人が遺産分割協議を行うため、アパート所有者の希望通りに財産を渡せないかもしれません。生前贈与であれば、所有者の希望通りに財産を渡すことが可能です。

 

アパートを生前贈与するデメリット

アパートの生前贈与によるデメリットを4つ紹介します。

相続時に土地の相続税評価額が高くなるケースがある

アパートを生前贈与すると、相続時に土地の相続評価額が高くなる場合があります。

アパートの建物のみを子どもに贈与した場合、土地の所有者は親のままです。子どもが親から土地を借りている状態になるため、土地は「貸家建付地」と見なされます。貸家建付地は条件を満たせば小規模宅地等の特例の対象となり、相続税の評価額が減額になりますが、親と子が生計を別にしている場合は、特例の対象とはなりません(※)。

そのため、相続時に土地にかかる相続税が増えてしまう恐れがあります。

※参考:国税庁.「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」,(参照2025-04-28).

負担付贈与になると贈与税が増える恐れがある

負担付贈与になると贈与税が増える恐れがあることも、生前贈与のデメリットです。

例えば、贈与する代わりにローンも負担する場合、負担付贈与に該当します。負担付贈与の場合、贈与税の課税対象となるのは、贈与財産の価額(時価)からローンの額を差し引いた金額です。時価は、固定資産税評価額よりも高い市場価格が基準となるため、贈与税の課税対象が増え、贈与税額も高くなってしまいます。

アパートの入居者から敷金を預かっている場合も、注意が必要です。敷金については入居者へ返還する義務があるため、アパートを生前贈与すると負担付贈与に該当します。この場合は、敷金と同額の現金を贈与すれば、負担付贈与に該当しないと見なされます。

不動産取得税が発生する

アパートを生前贈与すると、不動産取得税が発生します。

不動産取得税は、固定資産税評価額の3%です(※1)。相続の場合、不動産取得税は課されません。

また、所有権移転登記も行わなければならず、登録免許税を納める義務があります。相続の場合、登録免許税は0.4%ですが、生前贈与の場合は2%と税率がかなり高くなります(※2)。

※1 参考:東京都主税局.「不動産取得税」,(参照 2025-04-27).
※2 参考:国税庁.「No.7191 登録免許税の税額表」,(参照 2025-04-27).

トラブルに発展するリスクがある

トラブルに発展するリスクがあることも、生前贈与のデメリットです。

相続人が複数いるにもかかわらず、一人にしか生前贈与を行わなかった場合、贈与を受けていない人が不公平感を抱きやすいです。一人だけにアパートを贈与する場合は、他の相続人に他の財産を与えるなど、配慮する必要があるでしょう。

 

贈与税の課税制度は暦年課税と相続時精算課税の2種類

贈与税の課税制度は「暦年課税」と「相続時精算課税」の2種類があり、どちらかを選ぶことになります。それぞれどのような制度なのかを見ていきましょう。

暦年課税

暦年課税とは、一人の受贈者が1月1日から12月31日までの1年間に受けた贈与の合計額が110万円を超えた際に、超えた財産の額に対して贈与税がかかる課税制度です。

110万円を基礎控除されるため、1年間で贈与を受けた額が110万円を超えなければ、贈与税は発生しません。基礎控除を超えた財産に対しては、財産の額が多ければ多いほど課税率が高くなる超過累進税率が適用されています。

暦年課税で贈与税を算定する際は、「一般贈与財産」と「特例贈与財産」で課税率が異なります。特例贈与財産は、贈与をした年の1月1日時点で18歳以上の人が、直系尊属(両親や祖父母)から贈与を受けた際に適用される課税率です(※)。一般贈与財産よりも課税率が、低く設定されています。

※1 参考:国税庁.「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」,(参照 2025-04-27).

相続時精算課税

相続時精算課税とは、贈与をした年の1月1日時点で60歳以上の直系尊属が、18歳以上の子どもや孫などに対して、贈与する際に選択可能な課税制度です。

相続時精算課税の場合、基礎控除額110万円(各年)に加え、2,500万円までの特別控除があり、財産が2,500万円を超えないのであれば、贈与税は発生しません。相続時精算課税を超えた分に対しては、一律20%が課税されます(※)。

贈与者が亡くなって相続を受ける際、贈与を受けた財産と他の相続財産を加えて、相続税を算出することになります。ただし、既に納めた贈与税は、相続税から差し引くことが可能です。

一度この制度を選ぶと、暦年課税制度に切り替えることはできません。

※1 参考:国税庁.「No.4103 相続時精算課税の選択」,(参照 2025-04-27).

 

アパートの生前贈与で発生する贈与税に適した課税制度は?

一概には言えませんが、アパートの生前贈与で発生する贈与税は、相続時精算課税が適しているケースが多いでしょう。アパートは高額な財産のため、基礎控除が110万円の暦年課税より、2,500万円の特別控除がある相続時精算課税の方が、高い節税効果を得られる可能性が高いです(※1)(※2)。

ただし、前述した通り、相続時精算課税の場合、贈与者が亡くなった際にその他の相続財産を合算して相続税が算出されます。暦年課税で支払う税金よりも相続税が高くなることもあるため、税理士などに相談した上で検討するようにしましょう。将来の相続財産全体や控除適用可否も含め、慎重に検討する必要があります。

※1参考:国税庁.「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」,(参照 2025-04-27).
※2参考:国税庁.「No.4103 相続時精算課税の選択」 ,(参照 2025-04-27).

 

生前贈与が適しているかどうかはプロに相談しよう

アパートの生前贈与でメリットが享受できるかどうかは、さまざまな要因によって左右されます。ご自身に生前贈与が適しているかは、税理士などのプロに相談し、慎重に判断しましょう。

不動産管理を行う貝沼建設は、お子さまやお孫さまへの資産継承のサポートにも豊富な実績があります。アパート経営における税金のお悩みを抱えている方は、お気軽にご相談ください。

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