土地活用コラム

相続放棄で手放した土地はどうなる?誰が管理するの?具体的な手順や国の制度も紹介

「相続放棄で手放した土地はどうなるのだろうか」と不安に感じる方もいるでしょう。相続放棄した土地の管理方法は、他の相続人がいるのか、全員が放棄しているのかによって異なります。放棄しても土地が自動的に処分されるわけではありませんが、事前に手続きの流れや管理方法、注意点を把握した上で判断しましょう。

本記事では、相続放棄後に残った土地の扱いや管理義務の考え方、手続きの手順などを詳しく解説します。

土地は期日までに手続きをすれば相続放棄できる

両親や親族などから受け継いだ土地は、期日までに必要な手続きを行えば相続の放棄が可能です。

相続を放棄する場合、相続することを知った日から3カ月以内に家庭裁判所に申し立てを行います。この期日は民法第915条第1項で定められているため、もし3カ月を過ぎてから申し立てを行っても原則受理されません(※1)。

ただし、被相続人と交流がなく相続財産の調査が難航している、他の相続人と連絡が付かないなどの理由であれば、期日を延長できる可能性があります(※2)。

また、以下のケースでは土地を相続する意思があると見なされ、相続放棄ができない場合があります。

  • 被相続人の財産を一部使用した
  • 被相続人の借金を立て替えて返済した
  • 遺産分割協議書署名にサインした

 

相続放棄を検討している段階では、これらの行為には慎重に対応する必要があります。

※1 参考:e-GOV法令検索.「民法 第915条第1項」. ,(参照2025-04-16).

※2 参考:裁判所.「相続の放棄の申述」.,(参照2025-04-16).

土地を相続放棄すると財産の受け取りができなくなる

放棄を選んだ場合は、土地だけではなく現金や預金、不動産などの財産も受け取れなくなります。相続放棄は「一部の財産だけを放棄する」といった選び方ができません。全ての権利を放棄するか、受け継ぐかしか選択肢がないのです。

一度放棄すれば、プラスの財産もマイナスの財産も含めて一切相続しない扱いとなるため、慎重に判断しましょう。

相続放棄で手放した土地はどうなる?誰が管理するの?

相続放棄で手放した土地は、誰が相続人として残っているかによって管理方法や手続きの流れが変わってきます。

以下では、他の相続人がいる場合と全員が放棄した場合の2つのケースに分けて、土地がどう扱われるのかを解説します。

【ケース1】他の相続人がいる場合

相続放棄をしても、他に相続人がいればその人に土地の相続権が移ります。この場合、土地の管理や固定資産税の支払いは、次の相続人が引き継ぐ仕組みです。

相続順位は、民法第887条、889条、890条で以下のように定められています(※1)。

  1. 被相続人の配偶者と子ども
  2. 被相続人の直系尊属(父母や祖父母など)
  3. 被相続人の兄弟・姉妹

 

例えば、配偶者も子どもも全員相続放棄を選択した場合、次に優先されるのは被相続人の両親になります。両親が亡くなっているなどの理由で相続できない場合、被相続人の兄弟や姉妹に相続権が移る流れです(※2)。

また、他に相続人がいる場合、正式に引き継ぎが終わるまでは、相続を放棄した人が土地の管理を担う必要があります。具体的に求められる対応は、草木の手入れや不法投棄の防止、固定資産税の支払いなどです。

土地を適切に管理せず放置すると、大雨で土砂が流れ出したり、倒木で近隣住宅に被害を与えたりと思わぬトラブルにつながる恐れがあります。「相続放棄したから管理しなくても良い」とは考えず、他の相続人が正式に土地を受け継ぐまでは管理業務を適切に行いましょう。

なお、相続放棄すれば、被相続人が残した借金(負債)の支払い責任や土地の管理責任を負う必要はありません。ただし、その負債や管理責任は他の相続人に引き継がれるため、事前に相続放棄の旨を伝えておかなければトラブルに発展する恐れがあります。相続放棄を検討する際は、他の相続人に「自分は相続を放棄しました」と共有するようにしましょう。

※1 参考:e-Gov法令検索.「民法第887条、889条、890条」. ,(参照2025-04-16).

※2 参考:国税庁.「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」. ,(参照2025-04-16).

【ケース2】相続人全員が放棄した場合

相続人全員が放棄すると、その土地の持ち主がいなくなる状況になります。このようなケースでは、裁判所に相続財産管理人を選んでもらう手続きが必要になります。相続財産管理人とは、土地の管理や賃貸借契約などを代行する人のことです。放棄された土地を調査し、最終的に国に帰属する役割を担います。

相続財産管理人を選任しないまま土地が放置されると、管理責任の所在が不明確になります。その結果、土地に対して権利を持つ債権者(お金を貸した側)が債権を回収できなくなり、金銭トラブルに発展する恐れがあるのです。こうした事態を防ぐために、家庭裁判所を通じて相続財産管理人を選任する制度が設けられています。

選任を申し立てる際は、収入印紙代800円や切手代、官報公告料5,075円に加えて予納金を支払う必要があります(※)。予納金とは、管理人の活動にかかる費用に充てられるお金です。予納金が経済的な負担になる場合があるため、申し立てる際は費用を負担できる余力があるか慎重に判断しましょう。

なお、全員が相続を放棄した場合でも、相続財産管理人が決まるまでは相続人が管理業務を担う必要があります。土地を放置すると、近隣トラブルや固定資産税の滞納が起こる可能性があるため、引き継ぎが完了するまでは責任を持って管理しましょう。

※参考:裁判所.「相続財産清算人の選任」. ,(参照2025-04-16).

相続財産管理人の選任を請求するために必要な3つの要件

家庭裁判所に対して相続財産管理人の選任を請求するには、以下の3つの要件を満たしている必要があります(※)。

  • 利害関係人であること
  • 相続財産が残っていること
  • 相続人がいないと判断される状況であること

 

申立人は、被相続人の利害関係人または検察官でなければなりません。利害関係者とは、相続人や亡くなった方にお金を貸していた債権者、遺言で財産を受け取る予定だった受遺者など、財産に関係のある人を指します。関係のない第三者は申し立てができないため注意しましょう。

なお、相続財産が残っていない場合は、相続財産管理人を選任する必要がありません。財産がほとんどない状態で手続きを進めても、管理費用の方が大きくなってしまい、管理する側が損をする可能性があるためです。

相続人がいないと判断される状況であることも、申し立て条件の一つです。既に相続人が決まっており、財産を管理できる状態であれば管理人を選任する必要はありません。

※参考:裁判所.「相続財産清算人の選任」.,(参照2025-04-16).

【5STEP】相続放棄の手順

相続放棄をする際は、以下の手順で手続きを進めていきましょう。

  • 【STEP1】被相続人の相続財産を調査する
  • 【STEP2】必要書類を準備する
  • 【STEP3】家庭裁判所に準備した書類を提出する
  • 【STEP4】家庭裁判所から照会書が届く
  • 【STEP5】受理されたら相続放棄申述受理通知書が届く

 

【STEP1】被相続人の相続財産を調査する

まずは、被相続人の相続財産を調査します。亡くなった方が残した財産や借金などの負債を調査することで、相続すべきか放棄すべきかを判断しやすくなります。

主な調査対象は、被相続人の預貯金や有価証券、不動産、動産(車や貴金属など)、負債の5つです。関係機関に問い合わせて、どのような財産を所有していたのかを確認しましょう。

負債は、以下の信用情報機関で情報開示請求を行えば調査できます。

  • 日本信用情報機構(JISS)
  • 株式会社シー・アイ・シー(CIC)
  • 全国銀行個人信用情報センター(KSC)

 

財産調査は自分でも進められる作業ですが、不安な場合は弁護士や司法書士などの専門家に依頼すると良いでしょう。数十万の依頼費用がかかる場合があるため、見積もりで金額を確認する必要があります。

【STEP2】必要書類を準備する

相続財産の調査が完了したら、家庭裁判所に提出する書類を準備します。準備する書類は、相続放棄をする人の立場によって異なります。

以下は、相続人の立場ごとに必要な書類をまとめた表です(※)。

必要書類 相続人の立場
配偶者 子ども・孫 父母・祖父母 兄弟・姉妹 甥姪
相続放棄申述書
被相続人の住民票除票(戸籍附票でも可)
相続を放棄する方の戸籍謄本
被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本 不要 不要 不要
被相続人の被代襲者の死亡の記載がある戸籍謄本 不要

※孫が相続放棄する場合のみ必要

不要 不要 不要
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本 不要 不要
被相続人の子や孫の出生から死亡までの戸籍謄本(子・孫が亡くなっている場合) 不要 不要

 

被相続人の両親の死亡の記載がある戸籍謄本 不要 不要

※祖父母が相続を放棄する場合のみ必要

被相続人の兄弟姉妹の死亡の記載がある戸籍謄本 不要 不要 不要 不要

 

相続放棄申述書は、裁判所のWebサイトでダウンロードできます。書式は未成年と成人で分かれているため、間違えないように注意しましょう。

また申述時は上記の書類の他、収入印紙代800円と連絡用の郵便切手代がかかります(※)。切手代は地域によって異なるため、家庭裁判所に確認しましょう。

※参考:裁判所.「相続の放棄の申述」.,(参照2025-04-16).

【STEP3】家庭裁判所に準備した書類を提出する

STEP2で準備した書類を家庭裁判所に提出しましょう。申述先は、被相続人の最後に住んでいた住所を管轄する家庭裁判所です。

提出方法は、直接持参しても郵送でも構いません。手続きがスムーズに進むよう、裁判所のWebサイトで受付時間や送付先の確認をしておきましょう。

【STEP4】家庭裁判所から照会書が届く

相続放棄に関する書類を提出した後、家庭裁判所から10日程度で家庭裁判所から照会書が届くことがあります。照会書とは、本当に相続放棄の意思があるかどうかを確認するための書類です。

全ての人に届くわけではなく、家庭裁判所の判断により省略されるケースもあります。届いた場合は、記載された内容に沿って署名・押印し、期日までに返送しましょう。

【STEP5】受理されたら相続放棄申述受理通知書が届く

手続きが受理されると、家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が届きます。通知書が届けば、正式に相続放棄が認められたことになります。

通知書は、被相続人の債権者や金融機関に相続を放棄した旨を伝える際に必要な書類です。紛失しても再発行ができないため、大切に保管しておきましょう。

相続放棄以外で土地を手放す3つの方法

「土地の管理が大変」「どう活用すれば良いか分からない」といった理由で土地を手放したいのであれば、以下の相続放棄以外の方法を検討するのも一つの手です。

  • 不動産会社に依頼して土地を売却する
  • 自治体に寄付して有効活用してもらう
  • 土地活用で別の使い道を検討する

 

不動産会社に依頼して土地を売却する

遠方にあって管理が難しい場合や今後の利用予定がない土地は、相続後に売却して現金化すると良いでしょう。自分では相続するメリットがないと思っていても、第三者から見たら魅力的な土地かもしれません。

ただし、立地や条件が悪い土地は、売却活動を進めても買い手が付かない可能性があります。不動産会社と相談しながら価格設定を見直したり、更地にして売り出したりと工夫をしてみましょう。

自治体に寄付して有効活用してもらう

自治体によっては、土地の寄付制度を設けている場合があります。

土地の活用方法は自治体によって異なりますが、公共施設の整備やまちづくり、地域の活性化などに活用されるケースが多いです。ただし、土地の状態によっては活用が難しいと判断され、寄付を断られる場合があります。

また全ての自治体が寄付を受け付けているわけではないため、事前にWebサイトや窓口などで寄付制度を設けているかを確認してみましょう。

土地活用で別の使い道を検討する

土地活用で別の使い道を検討するのも選択肢の一つです。例えば、月極駐車場として貸し出したり、戸建て住宅やマンションを建設して家賃収入を得たりする方法があります。トランクルームにしてレンタル料を得るのも良いでしょう。

土地の立地や広さによって活用方法は異なるため、不動産会社や土地活用に詳しい建設会社などに相談しましょう。

相続土地国庫帰属制度を活用するのも選択肢の一つ

万が一相続後に土地を手放したいと思った場合は、国が行っている相続土地国庫帰属制度の活用を検討しましょう。

ここでは、相続した土地を手放したい方に向けて制度の詳細や要件を解説します。

相続土地国庫帰属制度とは?

相続土地国庫帰属制度とは、相続した土地を国が引き取る制度です。2023年4月27日から始まった新しい制度で「相続したものの管理が難しい」「使い道がない」などの理由で土地を手放したいときに活用できます(※1)。

制度ができた背景には、相続した土地の管理が負担となり、放置されるケースが増加していたことが大きく関係しています。所有者が分からない土地はまちづくりの妨げにもなるため、国が受け入れる体制を整えたのです。

制度を利用する際は、必要書類を法務局に提出し、審査に通った後に負担金を納める必要があります。負担金は、土地を一つ帰属するごとに20万円がかかります(※2)。ただし、一部の市街地や田、畑などは面積に応じて算出する仕組みです。

※1 参考:法務省.「相続土地国庫帰属制度について」.,(参照2025-04-16).

※2 参考:法務省.「相続土地国庫帰属制度の負担金」. ,(参照2025-04-16).

制度を利用できる人と対象となる土地の要件

制度を利用できるのは、相続や遺贈で土地の所有権を取得した相続人に限ります(※1)。

兄弟など、複数の人で相続した共有名義の土地も手続きが可能です。ただし、共有名義の土地の場合は、共有者全員がそろって申請が必要です。

また以下のケースに該当する場合は、申請時点で引き取り不可となります(※2)。

  • 建物が建設されている
  • 担保権や使用収益権が設定されている
  • 今後他人が利用する予定がある
  • 有害物質の影響で土壌汚染が見られる
  • 隣の土地との境目が曖昧である
  • 所有権などをめぐってトラブルが発生している

 

申請時点で引き取り不可にならなくても、急な斜面や崖がある土地や処分に手間がかかる土地などは、審査で帰属が難しいと判断される可能性があります。

引き取りを希望する場合は、事前に要件を満たしているかを確認しましょう。

※1 参考:法務省.「相続土地国庫帰属制度のご案内(第2版)」.,(参照2025-04-16).

※2 参考:政府広報オンライン.「相続した土地を手放したいときの「相続土地国庫帰属制度」」.P15. ,(2024-04-30).

土地の相続放棄は慎重に進めよう

土地を相続すると知った日から3カ月以内に必要書類を提出すれば、相続放棄が可能です。しかし、放棄すると土地以外の財産も受け取れなくなるため、どの選択肢を取るべきなのか慎重に考えましょう。

相続放棄以外にも、土地の売却や自治体への寄付、土地活用で賃貸収入を得るなどの選択肢があります。専門家と相談しながら、土地の使い道を検討しましょう。

貝沼建設では、建物の建設、土地の売却、貸し出しの3つを軸に、土地の特性に応じた活用方法をご提案しています。名古屋に根ざした55年の豊富な実績を生かし、将来を見据えた実用性の高い土地活用をサポートいたします。ぜひお気軽にご相談ください。

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