土地活用コラム
空き家を相続したらどうすべき?放置するリスクや空き家の対処法を解説
「親から家を相続したけれど、使い道がなくて放置している」という人もいるでしょう。家を処分するにはそれなりの手間や費用がかかりますが、面倒だからとそのまま放置していると、さまざまなリスクに見舞われる恐れがあります。空き家に資産価値がある場合は売却も可能であるため、使う予定のない家を相続したら然るべき方法で対処しましょう。
本記事では空き家を相続した際にやるべきことや、空き家を放置するリスク、相続の際に税制上の優遇を受ける方法について解説します。
そもそも空き家とは? 空き家法における定義と主な種類
空き家とは、空き家等対策の推進に関する特別措置法(空き家法)第2条にて、建築物またはこれに付属する工作物であり、常態的に居住その他の用途に使われていないもの、およびその敷地と定義されたものです(※)。
そのため、住居専用の住宅はもちろん、広義では店舗や事務所、倉庫、あるいはこれらとの併用住宅も空き家と見なされます。
※参考:e-GOV法令検索.「空家等対策の推進に関する特別措置法」.“第二条”. ,(参照2025-04-18).
空き家の種類
空き家には前述したものの他に、特定空き家と管理不全空き家の2つがあります。
特定空き家とは、保安・衛生・景観・生活環境保全上問題のある空き家です(※1)。具体的には、以下のような要件に該当するものが特定空き家と見なされます。
- 倒壊など著しく保安上危険となる恐れのある状態
- 著しく衛生上有害となる恐れのある状態
- 適切な管理が行われておらず、著しく景観を損なっている状態
- 周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
一方の管理不全空き家とは、空き家法の改正によって新たに定義された空き家で、適切な管理が行われておらず、将来的に特定空き家に認定される恐れのあるものです(※2)。例えば、屋根葺き材が破損している、立木の伐採が行われておらず腐朽が認められる、排水設備が破損しているなどの問題を抱えている空き家などがこれに該当します。
管理不全空き家は直ちに保安や衛生に重大な影響を与えるわけではありませんが、そのまま放置すれば遠からず特定空き家となり得るリスクを秘めているため、行政からの指導の対象です(※3)。
※1参考:e-GOV法令検索.「空家等対策の推進に関する特別措置法」.“第二条2項”. ,(参照2025-04-18).
※2参考:e-GOV法令検索.「空家等対策の推進に関する特別措置法」.“第十三条”. ,(参照2025-04-18).
※3参考:e-GOV法令検索.「空家等対策の推進に関する特別措置法」.“第十四条3項”. ,(参照2025-04-18).
空き家を相続することになった場合に考えるべきポイント
空き家を相続することになった場合にまず考えなければならないのは、そのまま相続するべきか否かです。
空き家の管理は決して簡単なことではなく、何らかの用途で利用するにしても、処分するにしても、相応の手間やコストが発生します。場合によっては負債になってしまう可能性もあるため、管理するのは難しいと感じたら、相続を放棄するのも一つの方法です。
ただし、放棄する権利を個別に選択することはできず、相続放棄すると被相続人の遺産を相続する権利の全てを手放さなければなりません。空き家以外の遺産を相続したいのなら、安易に相続放棄せず、空き家を含めて相続した上で、改めて空き家の管理方法や処分方法を検討した方が良いでしょう。
なお、相続放棄する場合は、相続の開始を知った日から3カ月以内に相続放棄の申述書や、申し立てに必要な書類を準備し、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に提出する必要があります(※)。
3カ月を超えると、相続開始を後から知った場合など一部の例外を除き、原則として相続放棄はできなくなるため、両親が家を保有していて、将来的に自分が空き家を相続する可能性がある場合は、権利を放棄するか否かについて前もって考えておくと良いでしょう。
※参考:裁判所.「相続の放棄の申述」.,(参照2025-04-22).
空き家を相続するかどうかの判断基準
空き家を相続するかどうかを判断する基準は大きく分けて3つあります。
まず1つ目は、資産価値の有無です。立地の良い場所にある空き家や、リフォームやリノベーションを行ったばかりで状態が良い空き家は買い手が付きやすく、好条件で売却できる可能性があります。
おおよその資産価値は、国土交通省の土地総合情報システムや、不動産流通機構のレインズマーケットインフォメーション、不動産会社のポータルサイトなどを利用すればチェックできます。より詳しい資産価値を調べたいのなら、不動産会社に依頼して査定してもらうと良いでしょう。
2つ目は、空き家の管理費用です。空き家を何らかの用途に利用する場合はもちろん、売却するにしても買い手が付くまでは物件を維持・管理する必要があります。
空き家の管理には固定資産税や都市計画税といった税金がかかる他、清掃費や修繕費などのメンテナンス費用も必要です。さらに、空き家が遠方にある場合は交通費の負担も考慮しなければなりません。こうした維持・管理コストを負担するだけの価値が相続する空き家にあるかどうかも、重要な判断基準の一つになるでしょう。
3つ目は、他の相続財産の価値です。空き家自体に資産価値がなくても、他に相続する財産に大きな価値があればトータルでプラスになると考えられます。前述の通り、相続を放棄すると空き家だけではなく、それ以外の財産を相続する権利も失われるため、空き家の価値だけで相続するか否かを決定しないよう注意しましょう。
空き家に資産価値があった場合の対処法
相続した空き家に資産価値があると判明した場合の対処法は、大きく分けて3つあります。それぞれの方法をよく理解した上で、納得のいく方法を選びましょう。
売却する
空き家の立地が良い場合、売却すればまとまった譲渡益を得られる可能性があります。なお、空き家を売却する方法は大きく分けて3つあります。
- 手を加えずに売却する
- リフォーム・リノベーションを行ってから売却する
- 解体・更地にしてから売却する
以下ではそれぞれの方法ごとのメリット・デメリットをまとめました。
手を加えずに売却する
1つ目は、何も手を加えず、相続したままの状態で売却する方法です。補修や修繕を行わない分、相続してからすぐに売りに出せるところや、修繕費の手間やコストがかからない点が大きな魅力です。
一方で、物件の状況を正しく理解しないまま引き渡すと、契約不適合責任を負うリスクが高くなります。契約不適合責任とは、かつて瑕疵担保責任と呼ばれていた法的責任の一種です。目的物の種類や数量、品質のいずれかについて契約内容との間に相違が認められた場合、売り主は買い主に対して一定の責任を負うことになります(※)。
具体的には、相違があった部分について補修などを行って契約通りの内容にした上で物件を引き渡す、売却金を減額する、損害賠償請求に応じる、契約を解除するなど、然るべき対応を行わなければなりません。
もちろん、空き家の不具合や瑕疵について、あらかじめ申告した上で売却すれば契約不適合にはなりませんが、状態によってはなかなか買い手が付かなくなるリスクがあります。
※参考:e-GOV法令検索.「民法」.“第五百六十二条など”. ,(参照2025-04-22).
リフォーム・リノベーションを行ってから売却する
2つ目は、リフォームまたはリノベーションを行い、空き家の状態を改善してから売却する方法です。手を加えずに売却する場合よりも、物件の外観や耐久性、利便性などが改善されるため、買い手が付きやすくなる点がメリットです。
一方で、リフォームやリノベーションには手間とコストがかかります。特に大規模な修繕・改修には多額の費用がかかるため、場合によってはリフォーム代が譲渡益を上回り、損をしてしまう可能性もあります。
解体・更地にしてから売却する
空き家の傷みが激しい場合、建物を解体し、更地にして売るという方法もあります。損傷の激しい空き家を残したまま売るよりも、更地にした方が需要が高く、買い手が付きやすくなるところが大きな利点です。また買い手が付くまでの維持管理費が不要になるところもメリットでしょう。
一方で、建物の解体費用がかかることと、固定資産税の軽減特例から外れてしまうことがネックです(※)。
※参考:e-GOV法令検索.「地方税法」.“第三百四十九条の三の二”. ,(参照2025-04-22).
賃貸用住居として活用する
空き家を賃貸用住居として第三者に貸し出せば、毎月家賃収入を得ることが可能となります。家賃収入は借主がいる間はずっと続くため、長く運用した場合、最終的には譲渡益よりも利益が上回る可能性も十分あります。
ただし、賃貸用住居にするためには、リフォームやハウスクリーニングなどを行って最低限の環境を整えなければなりません。また貸主としての責任も発生するため、空き家を貸し出している間に何らかのトラブルが生じた場合、借主と交渉したり、補償が必要になったりすることもあります。
さらに、住居が傷んだらメンテナンスも行わなければならず、継続的に手間とコストがかかる点にも注意が必要です。
自宅やセカンドハウスにする
相続した空き家を自宅またはセカンドハウスにするという方法もあります。それまで賃貸住宅に住んでいた場合、空き家に移り住めば家賃の支払いから解放されるため、住居費を節約できるでしょう。
ただし、空き家の状態によってはリフォームやリノベーションを行う必要があります。
またセカンドハウスとして利用する場合、一定の要件を満たせば不動産取得税や固定資産税などの軽減措置を受けられるため、維持費の節約にもつながります(※1)(※2)。ただし、優遇措置を受けるためには一定の居住要件を満たして正式に認定されなければならないため、当該要件をクリアできるかどうかが焦点となります。
さらに、セカンドハウスにした場合は定期的にメンテナンスを行う必要があるため、手間とコストがかかる点にも注意が必要です。
※1参考:総務省.「不動産取得税」.,(参照2025-04-22).
※2参考:e-GOV法令検索.「地方税法」.“第十五条の六または第十五条の七” ,(参照2025-04-22).
空き家を放置するリスク
相続した空き家をどのように活用・処分するかは人それぞれですが、やってはならないのは空き家をそのまま放置することです。空き家を長らく放置するとさまざまなリスクがあり、所有者本人はもちろん、空き家周辺の地域に住んでいる人たちにも迷惑をかける恐れがあるためです。場合によっては大きな損害や責任を負うことにもなりかねないため、空き家は放置せず、何らかの方法で対処しましょう。
ここでは空き家を放置した場合に想定されるリスクを5つ紹介します。
倒壊のリスク
空き家を適切に管理しないまま長らく放置すると、建物は徐々に傷んできます。そこへ地震や台風などの災害が発生すると空き家が倒壊し、場合によっては周辺にいる人がけがをしたり、隣り合う建物が壊れたりする原因となります。
空き家の倒壊に伴う損害の責任は所有者が負うことになるため、多額の損害賠償を請求される可能性もあるでしょう(※)。
※参考:e-GOV法令検索.「民法」.“第七百十七条”. ,(参照2025-04-22).
犯罪のリスク
空き家は屋内に誰もおらず、監視の目も少ないため、犯罪の温床になる可能性があります。例えば、第三者に窓を割られて侵入される、内部に残った家財を盗難・破損される、放火の被害に遭うなどです。
このような場合、犯罪を実行した人間に過失があるのはもちろんですが、周囲にも悪影響が及ぶ場合には、空き家を放置した所有者も「所有者としての管理責任を果たしていない」と見なされる恐れがあります(※)。
※参考:e-GOV法令検索.「空家等対策の推進に関する特別措置法」.“第五条”.,(参照2025-04-22).
資産価値低下のリスク
空き家を長らく放置すると、換気不足による建材の劣化や虫害・獣害による被害などにより、建物そのものの価値が著しく低下していきます。
その結果、いざ売却しようとしたときになかなか買い手が付かなかったり、査定が思った以上に安くなったりして、大きな損をしてしまう恐れがあります。
周辺地域の環境悪化
放置された空き家は、犯罪を誘発したり、虫やネズミなどが大量発生したりする原因です。その結果、空き家やその敷地内だけではなく、周辺環境の治安や衛生面が悪化し、近隣住民に多大な迷惑をかける原因となることもあります。
実際、近隣住民から行政に対して苦情や訴えが入るケースは多く、街の大きな問題となっています。
特定空き家の指定
前述の通り、空き家の管理が行き届いていないと、自治体から管理不全空き家または特定空き家に指定される可能性があります。管理不全空き家に指定されると、行政による指導や勧告の対象となり、必要な措置を講じなければなりません。それを無視してさらに空き家の状態が悪化すると、特定空き家と見なされ、指導・勧告の他に措置命令を出されることもあります。
勧告を出されると空き家法の規定の下、住宅用地特例の対象から除外となって固定資産税が大幅に高くなる他、措置命令が下された場合は50万円以下の過料に処される可能性があるため注意が必要です(※1)。
もし命令後も必要な措置が講じられなかった場合、最後の手段として所有者の同意を得ずに行政が強制的に空き家を解体する行政代執行が行われます。なお、この場合の解体費用は行政から所有者に請求されることになります(※2)。
※1参考:e-GOV法令検索.「空家等対策の推進に関する特別措置法」.“第三十条”. ,(参照2025-04-22).
※2参考:e-GOV法令検索.「空家等対策の推進に関する特別措置法」.“第二十二条9項”.,(参照2025-04-22).
空き家の相続で税制上の優遇を受けられるの?
空き家の相続では、一定の要件を満たすことで税制上の優遇を受けられます。
相続した空き家を賃貸に出したり、自宅またはセカンドハウスとして保有したりする場合、毎年固定資産税をはじめとする各種地方税を納めなければなりません。これらの税に関して税制上の優遇を受けたい場合は、空き家を第三者に売却する方法がおすすめですが、その際に得られる売却金には譲渡所得税が課されます。
譲渡所得税は、譲渡価格から取得費と譲渡費用(不動産の仲介手数料など)、特別控除額などを差し引いて求めた課税譲渡所得に、一定の所得税率を乗じることで算出されます。税率は空き家を所有していた期間によって異なり、土地や建物を売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超える長期譲渡所得の場合は15%、5年以内の短期譲渡所得の場合は30%です(※1)。
ただし、空き家に関しては被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例が適用されることがあります。特例が適用された場合、譲渡所得の金額から最高3,000万円までの控除を受けられるため、空き家を売却した場合の税負担を大幅に軽減できます(※2)。
※1参考:国税庁.「土地や建物を売ったとき」. ,(参照2025-04-21).
※2参考:国税庁.「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」. ,(参照2025-04-21).
特例を受けるための要件
前述した特例は相続した空き家全てが対象となるわけではなく、以下3つ全ての要件を満たしている必要があります(※1)。
- 昭和56年5月31日以前に建築されたものであること
- 区分所有建物登記がされている建物でないこと
- 相続開始の直前において被相続人以外に居住していた人がいなかったこと
なお、3については被相続人が要介護・要支援認定を受けて老人ホーム等に入所しており、相続の直前まで居住の用に供されていなかった場合、一定の要件を満たせば特例の対象となります(※2)。
また上記に挙げた空き家そのものの要件以外にも、いくつかの要件を満たす必要がります。国税庁のホームページにて概要を確認しておきましょう。
※1参考:国税庁.「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」. ,(参照2025-04-21).
※2参考:国税庁.「No.3307 被相続人が老人ホーム等に入所していた場合の被相続人居住用家屋」. ,(参照2025-04-21).
相続した空き家は放置せず、適切な方法で対処しよう
相続した空き家をそのまま放置すると、建物が倒壊したり、犯罪の温床になったり、資産価値が低下したりするリスクがあります。また管理不全空き家や特定空き家に指定されると、行政から指導や勧告を受けたり、場合によっては罰則や行政代執行の対象になったりする可能性もあります。以上の点から、空き家を相続したら早めに何らかの方法で対処し、リスクを未然に防ぐことが大切です。
空き家の対処法は建物に資産価値があるかどうかによって異なりますが、価値が高い場合は売却または賃貸用住居として活用することを検討した方が良いでしょう。
貝沼建設では、相続した空き家の売却や資産運用について適切なサポート・支援を行うサービスを提供しています。55年にわたって培ってきたノウハウに基づき、さまざまな角度から建設・不動産にまつわる悩みや困り事を解決してきた実績があります。
相続した空き家の取り扱いに困っている方は、ぜひ貝沼建設までお気軽にご相談ください。
土地活用についてのご相談はこちらから