土地活用コラム
土地活用の定番「賃貸住宅経営」とは?失敗しないための基礎知識を解説
遊休地を有効活用する「土地活用」にはさまざまな方法があり、中でも「賃貸住宅経営」は長期的に安定した収入を得やすい手段です。賃貸住宅にはアパートや戸建て賃貸などいくつかの種類があり、それぞれ建築費や管理方法、収益性などが異なります。
本記事では賃貸住宅経営の基本から種類ごとの特徴、注意点、始め方、税金との関係まで幅広く解説します。所有している土地をどのように活用しようかお悩みの方は、ぜひ最後まで読んで参考にしてみてください。
※本記事は2025年8月の情報です。
土地活用としての賃貸住宅経営とは?
賃貸住宅経営とは、所有する土地に建築した建物を住居として貸し出し、入居者から支払われる家賃収入によって利益を得る土地活用方法です。一定の初期投資が必要となるものの、長期にわたり安定した収益が得やすい傾向にあります。特に駅や商業施設へのアクセスが良い土地や、生活インフラが整ったエリアの土地は、賃貸住宅経営に適しています。
なお賃貸住宅経営と並ぶ賃貸事業の形として、店舗やオフィスの用途で建物を貸し出す「事業用賃貸経営」というものも存在します。事業用賃貸経営はテナントが入居することが前提となりますが、賃貸住宅経営はそういった見込みを必要とせず、小規模でもスタートしやすい点が特徴です。
賃貸住宅経営のメリット
賃貸住宅経営は、家賃という安定収入を長期的に得られる可能性が高い土地活用の方法です。賃貸住宅の需要が安定している地域であれば入居率を維持しやすく、安定したキャッシュフローを実現できるでしょう。
また専門的な知識やノウハウがなくとも参入でき、建物を適切に管理・改修し続けることで資産価値を維持・向上させられる点も、大きな魅力です。
さらには、建物を建築した土地は税務上の評価額が下がるため、固定資産税や相続税などの節税につながる場合も。賃貸住宅経営の節税効果については、後ほど詳しく説明します。
賃貸住宅の種類と特徴
賃貸住宅には主に「アパート」「マンション」「戸建て賃貸」があり、それぞれ構造や建築費、入居者層などに違いがあります。また特殊な形として「賃貸併用住宅」という選択肢もあるので、事前にしっかりと違いを理解しておき、持っている土地の収益性を最大化できる方法を検討しましょう。
アパート経営
一般的に2〜3階建ての集合住宅を指す「アパート」は、木造や軽量鉄骨造のものが多く、比較的安価な建築費で作ることのできるタイプの住宅です。
アパート経営では建築費を抑えられる分、短期間での投資回収が目指せるケースも多いでしょう。ただし、木造のアパートはマンションなどに多い鉄筋コンクリート造と比べ、防音性や耐久性の面で劣るため、入居者の入れ替わりが発生しやすい可能性があります。
賃貸としてアパートを建築する際の主な入居ターゲットは、単身者や新婚夫婦、学生など、家賃を抑えたい傾向にある世帯が中心となります。
マンション経営
鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造の建物をメインとした「マンション」は、耐久性や耐火性、防音性に比較的優れている住宅です。中高層階建ての作りになっていることが多く、都市部や人口密集地など、安定した需要が見込める土地に向いています。
マンションの建設費は高額になる傾向にありますが、その分資産価値は下がりにくく、長い将来にわたり安定した収益を得られる可能性があります。十分な資金計画と、長期的な視点での経営が必要です。
賃貸としてマンションを建築する際の主な入居ターゲットは、単身者からファミリー層まで幅広いです。立地条件によっては家賃を高く設定できる可能性もあります。
戸建て賃貸
一戸建て住宅を貸し出す形態を「戸建て賃貸」と呼びます。住居として使わなくなった建物を戸建て賃貸にするケースだけではなく、賃貸経営用の建物を新築するケースもあるでしょう。庭付きや駐車場付きなどの住宅であれば、生活環境の充実を求めるファミリー層に好まれるはずです。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会 日管協総合研究所の調査によると、賃貸住宅で暮らすファミリー層の世帯は単身世帯と比べ、同じ場所で長く暮らす傾向にあります。入居者の入れ替わりが少ないことから、戸建て賃貸の経営はアパートやマンションの経営よりも管理の手間を抑えられ、手放すときも比較的容易です。
ただし土地の面積に対し戸数が限られるため、安定した収益を得るには、需要のあるエリアで経営する必要があります。
※参考:公益財団法人日本賃貸住宅管理協会 日管協総合研究所.「第28回 賃貸住宅市場景況感調査『日管協短観』」,(参照2025-08-25).
賃貸併用住宅
賃貸住宅の中でも少し特殊な形として「賃貸併用住宅」というものもあります。賃貸併用住宅とは、一つの建物の中に、自宅としての居住スペースと他人に貸し出す賃貸スペースを併設した住宅のことです。例えば戸建ての建物の1階をオーナーの自宅、2階を賃貸住宅というように分け、独立した間取りにすることでプライバシーを確立します。将来的には子世帯との二世帯住宅とするケースもあり、ライフステージに応じた柔軟な運用ができる点も魅力です。
賃貸併用住宅を経営すると、賃貸部分から家賃収入を得ながら自らもそこへ住み続けるため、収益を生活費への補填やローンの返済に活用できます。一定の条件を満たせば、アパートローンよりも金利の低い住宅ローンを利用できる可能性がある点も、大きなメリットです。
一方で、賃貸併用住宅は特殊な構造であることから、一般的なアパートやマンションに比べて売却しづらい場合があります。売却時は「自宅付き賃貸」という特殊な物件として扱われ、買い手が限定されやすい点には注意が必要です。
賃貸住宅経営を行う際の注意点
ここで、賃貸住宅を経営する際の注意点も確認しておきましょう。特に近年は人口減少や地域ごとの需給差が拡大しており、リスク管理の重要性が増しています。
まず賃貸住宅経営を行うには、種類にかかわらず一定の初期投資が必要です。土地の条件や建物の規模にもよりますが、少なくとも数千万円単位の建築費がかかると考えておきましょう。
加えて、入居者が集まらなければ空室期間が発生し、家賃収入が減少する点も考慮しなければなりません。需要の変化や近隣競合の増加に応じ、家賃を下げざるを得ないケースも考えられます。借入をして建築の初期費用などに当てるケースも多いので、収益が減って支払うローンの方が高くなる「オーバーローン」の状態にならないよう、余裕を持った返済計画を立てておくべきです。
さらに、建物は月日が経つと劣化するため、屋根や外壁の修繕、設備交換などの維持費用が定期的に発生します。計画時に修繕積立や維持管理費を十分に見込んでいないと、突発的な支出で資金繰りが悪化します。将来的なリスクを踏まえて計画することが大切です。
なお管理を専門業者に任せる場合、手間はかかりませんが、費用が発生するのが一般的です。収益を確保するためには自主管理という方法もありますが、その際はトラブルにつながらないよう、適切な管理業務を行う必要があります。
賃貸住宅を経営することで節約できる税金
賃貸住宅を経営すると、さまざまな税制上の優遇措置を受けられます。例えば建物が建っている土地については住宅用地の特例が適用され、固定資産税や都市計画税が軽減されます。また所得から建物や設備の取得費を「減価償却」として耐用年数に応じて差し引けるため、所得税の負担を抑えることが可能です。
さらには、青色申告を選択することで最大65万円の特別控除が受けられる他、赤字が出た場合には翌年以降への繰越ができるなどのメリットもあります。これらの制度を有効に活用するためには、税制の最新情報や適用条件を正確に把握し、適切に申告することが大切です。
※参考:東京都.「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)」,(参照2025-08-25).
※参考:国税庁.「No.3261 建物の取得費の計算」,(参照2025-08-25).
※参考:国税庁.「No.2072 青色申告特別控除」,(参照2025-08-25).
相続税対策としての賃貸住宅
賃貸住宅を経営すると、相続税の算定時に必要となる、土地や建物の「評価額」を下げる効果も得られます。特に賃貸住宅が建っている土地の評価額は「貸家建付地評価」として、更地の状態よりも低く算定されます。建物部分も「貸家」として低く評価されるため、全体として相続税の課税対象額を抑えられるでしょう。生前贈与と組み合わせて、さらに節税効果を高められるケースも多いです。
なお相続後は引き続き賃貸経営を行うのか、売却して現金化するのかによって、税務や資金計画が大きく変わります。遺産分割のトラブルを避けるためには、早めに家族と話し合っておくことをおすすめします。
※参考:国税庁.「No.4614 貸家建付地の評価」,(参照2025-08-25).
※参考:国税庁.「No.4402 贈与税がかかる場合」,(参照2025-08-25).
まとめ
賃貸住宅経営は、安定収入や資産形成、節税効果など多くのメリットを持つ一方で、空室リスクや修繕費負担、家賃下落などの課題を伴う収益化手段です。賃貸住宅にはさまざまな種類があるため、各特徴をしっかりと理解し、所有している土地に適した形態の住宅を経営することが大切です。
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