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土地活用コラム

不動産の生前贈与は慎重に!

 

◎今回は実際に担当した事例の紹介です。母親が2000年に亡くなり(父親は1990年に死亡)、遺産は一筆の土地(900坪、時価約9000万円、長男が3分の1、母親が3分の2で共有)のみです。土地の上には建物(2階建て、相続時で築50年は経過、母屋以外にも蔵などがあり、敷地の半分を利用)があります。建物はもともと母親の単独所有でしたが1995年に長女に生前贈与されており、相続時には長女の単独名義となっていました。母親が亡くなってからは空き家となっており、朽廃状態でした。

 

 

①基本割合
相続人は長女(私の依頼者)と長男の姉弟2人で、依頼時はともに80代です。
遺言書はないので、法定相続分の2分の1ずつとなります。その結果、母親の権利である3分の2を半分ずつ分けるので、土地全体については、長男が3分の2、長女が3分の1の権利があることになります。
そうすると、900坪の土地を長男600坪、長女300坪と分筆して遺産分割すれば円満解決になりそうです。しかし、互いがそのような解決では納得せず、遺産分割が調うまでに相続開始から20年も要してしまいました。

 

 

②長女の要望
❶土地の取得は希望しない
❷自分の持分(時価約3000万円)を長男が買い取るか、全部売却して代金を分けたい
❸建物の贈与は、自分が住む予定があるわけでもないのに、相続対策という名目で長男が主導したものだから、解体費用(見積額700万円)の半分を負担してほしい
❹長男夫婦は、父親と母親の介護は一切しておらず、後継ぎというのはおかしい

というものでした。

③長男の回答 
長女の要望を長男に伝えたところ
❶土地は、長男で後継ぎである自分が、全部取得したい
❷持分を買い取るお金はないし、先祖代々からの土地なので売却したくない
❸建物の贈与は母親と長女で進めたことであり、自分が主導したものではないし、長女名義なので解体費用は全て長女が負担すべき
❹両親の介護は長女任せであったが、樹木が伸び放題となっているという近隣からの苦情の度に自分が対応してきた

④調停の経過と浮上した問題点
このように「売らない、払わない」では何の進展も見込めないことから、長女は家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てることにしました。長女の申立内容は、①300坪分の買取り、②300坪と600坪に分筆して長女は300坪を取得する、③いずれも応じないならいったん長男と長女の共有名義にし、その上で共有物分割の裁判をして競売にかける、というものでした。

⑴長男は代理人を選任せず、体調不良で入退院を繰り返すなど、当初は膠着状態でした。しかし、「売らない、払わない」では済まないという調停委員からの説得もあり、②案で分筆してそれぞれが取得することになりました。そして、確定測量を行うこととなりました。

⑵どのように分筆ラインを引くか?
土地が南北に長い長方形であったため、分筆線は東西に引かざるを得ず、そのため北側と南側の2つの土地を分けることになります。そこで、北側と南側でどちらを取得するかで一揉めありました。結局、建物が北側に位置していたことや、南側でも北側でも評価差があまりないことから、長女が北側300坪を取得する前提で進めることとなりました。

⑶建物の越境状態をどうするか?
建物は土地の北半分にある上、分筆すると建物が越境している状態となってしまいます。
ここは長女が北側を取得する条件として、長女が土地を売却するまでは越境状態を承認し、地代なども支払わないこととなりました。

⑷建物の解体費用をどうするか?
結局、ここでも揉めました。しかし解体費用は所有者負担が原則であることや、解体費用の半額350万円で揉めて長期化するよりは、金額を負担してでも早期に解決し、早く売却を進めた方が得策であるということで、長女が全額を負担することにしました。
また、長男が体調不良で調停には出席できない状態となっており、長男のお子さんが代理出席していたこともあります。

こうして、土地を持ち分の割合で分筆することで調停が成立しました。申立てをしてから1年3か月かかりました。

➄調停成立後の経過

⑴煩雑な登記手続
調停が成立したことで大きなヤマは越えましたが、実際に登記手続が完了しないと完結しません。今回は、①相続登記、②分筆登記のほか、母親と長男が共有していたので③共有物分割登記も必要となり、3つの登記手続を1つずつ進める必要がありました。登記手続が完了するまでに、調停が成立してから3か月近くかかりました。

⑵長男の死亡
登記手続が完了してから2か月後に、長男が亡くなりました。

⑶解体工事の着工
登記完了後に、長女が取得した土地に買付けが入ったので、解体工事に入ることになりました。廃棄量や伐採の増加もあり、解体工事費用は最終的には900万円近くとなってしまいましたが、無事完了しました。現在、
買付業者が開発許可申請中です。

⑥本件を振り返って
●良かった点
長女からすれば高額な解体費用を全額負担することはかなり不本意でした。
しかし、妥協することで長男が生存時に登記手続が完了することができました。調停中に亡くなってしまうと調停が3か月は中断しますし、調停の相手が長男の相続人(長男の妻子)に変更するので最初からのやり直しとなり、長女と長男の嫁との関係は犬猿であることから、さらに時間が経過するところでした。「譲歩」と「妥協」は争い事を早く解決するための最大の武器です。

●留意事項
本件で一番の失敗は、長女が使用する予定がない建物を、長女に生前贈与してしまったことです。金銭の生前贈与であれば、相続時の清算もシンプルです。しかし、不動産については評価額を巡って争いになることはある上。建物であれば、いずれ朽ち果てて解体という問題も出てきます。土地と建物については、生前贈与にせよ遺言にせよ、将来的な見通しをしっかり考えた上で後継者を決めないと、かえって大きなトラブルになりかねないことは十分に留意してください。特に生前贈与であれば、贈与者(あげる側)と受贈者(もらう側)の話し合いが可能なので、贈与の目的と本人の意向を話し合った上で進めるのがトラブル回避となります。

 

 

 

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