土地活用コラム

【手続きガイド付き】住宅取得等資金の贈与税とは?非課税特例の全容と注意点を解説

近年、住宅価格の上昇や物価高の影響により、親や祖父母から住宅取得を目的とした資金援助を受けるケースが増えています。特に若い世代にとっては、自己資金だけで住宅を取得することが難しく、家族からの資金援助がマイホーム購入の大きな支えとなっていることも多いでしょう。

本来であればこのような資金援助は「贈与」と見なされ、贈与税の課税対象となる可能性があります。そこで注目されているのが、住宅取得を目的とした資金援助に適用できる「非課税特例」です。この制度を上手に活用すると、贈与税の負担を抑えながら、親や祖父母からの資金援助を受けることが可能です。

本記事では、贈与に関する基本ルールから、非課税特例の詳細、手続きの流れや必要書類までを分かりやすく解説します。これから住宅取得を検討している方、特にご両親などから資金援助を受ける予定の方は、ぜひ参考にしてください。

※本記事は2025年7月時点の情報です。

親から住宅取得を目的とした資金援助を受けたら贈与税対象になる?

住宅を購入する際、自己資金だけで全額を賄うのは簡単ではありません。特に都市部では住宅価格が高騰しており、若年夫婦だけで数千万円規模の住宅ローンを組むのは容易なことではないです。そのため、親世代からの支援によって住宅取得を実現するケースが増えています。

不動産流通経営協会の2024年度調査によると、住宅取得者の1割強は親族から資金援助を受けており、そのうちの77.8%が500万円以上の金額です。中でも30~40代前半の住宅購入者は資金援助を受けている割合が高く、子育て世代を中心に、贈与を受けて住宅を取得する方法が広まっている様子が伺えます。

こうした資金援助は本来、たとえ親子間であっても贈与税の対象です。贈与税とは受け取った人が納める税金のことで、現金だけではなく振込や現物でも贈与と判断されます。

※参考:一般社団法人 不動産流通経営協会/「不動産流通業に関する消費者動向調査<第 29 回(2024 年度)>」. ,(参照2025-07-29).

贈与税の基本ルール

通常、贈与税は1年間(1月1日〜12月31日)に受け取った贈与の総額から、基礎控除額110万円を差し引いた残額に応じて課されます。

税額の決め方は、課税対象額が大きくなると税率や控除額が段階的に上がる「累進課税制度」が適用されており、最大で55%の税率です。税率には一般贈与財産と特例贈与財産の2パターンがあり、親や祖父母からの住宅取得を目的とした資金援助は、一般的に特例贈与財産として計算されます。

以下は、2025年7月時点における特例贈与財産の税率区分の一例です。

課税価格(基礎控除後) 税率 控除額
200万円以下 10% 0円
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円

 

例えば500万円を住宅取得資金として贈与された場合、基礎控除を差し引いた390万円が課税価格となり、15%の贈与税率を乗じます。そこから10万円の控除額が差し引かれ、税額は48万5,000円となります。

贈与税は受け取った人(受贈者)が申告・納税する義務があり、申告期限は翌年2月1日から3月15日までです。

※参考:国税庁.「財産をもらったとき」. ,(参照2025-07-30).

住宅取得等資金にかかる贈与税の非課税特例とは?

それでは、親や祖父母からの住宅取得を目的とした援助は「贈与」に該当するため、多額の税負担が生じてしまうのでしょうか。ここで登場するのが、「非課税特例」です。

実は住宅取得を目的とした資金援助は、一定の条件を満たせば非課税特例が適用され、贈与税がかからないようにできます。国税庁が「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」と呼んでいるこの制度は、期限や適用条件が細かく定められているため、事前に制度内容を把握した上で計画的に利用することが大切です。

なお、国土交通省が指す「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」は、国税庁の指す非課税特例と同じものを指しています。

2025年現在は、一般住宅の場合500万円まで非課税とされており、この範囲内であれば贈与税を納める必要はありません。例えば親から500万円の資金援助を受けた場合、非課税特例を使えばその全額が非課税となり、贈与税は0円になります。親や祖父母からまとまった額の資金援助を受ける機会がある方は、大きな節税効果を得られるでしょう。

※参考:国税庁.「No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」. ,(参照2025-07-30).

※参考:国土交通省.「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」. ,(参照2025-07-30).

制度の対象となる人

原則として非課税特例を受けられるのは、受贈者が日本に住む18歳以上の人であり、資金を贈る人(贈与者)が両親もしくは祖父母の直系尊属である場合に限られます。兄弟姉妹や親戚からの贈与は対象外です。

また、贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下(床面積によっては1,000万円以下)であること、贈与を受けた年の翌年3月15日までに受け取った資金を住宅の建設などに使いそこへ住むこと、過去に同様の非課税特例を受けていないことなどが条件となります。

さらに、贈与の対象となる住宅には床面積や構造などの要件があり、例えば床面積は40㎡以上240㎡以下で、登記上の持分が受贈者本人にある必要があります。

このルールに基づいて考えると、20歳の人が祖父母から住宅資金の贈与を受け、年収が500万円のときに新築戸建てを取得した場合、諸条件を満たして非課税特例を利用できる可能性が高いです。

住宅取得等資金の使い道

住宅取得等資金とは、住宅を新築・購入、または増改築するために必要な費用を指します。代表的なものとしては、土地の購入費用、建物の建築費、中古住宅の購入費、増改築・リフォーム費用が挙げられます。

一方で、家具・家電・カーテンなどの生活用品、引っ越し費用、車庫単独の工事費など、住宅本体に直接関連しない費用は住宅取得等資金に含まれません。

例えば「家具も一緒に購入するからその資金も贈与してもらった」という場合、その家具部分は非課税特例の対象外です。このように、何に使う資金なのかによって取り扱いが変わるため、使途を明確にしておく必要があります。なお実際の非課税特例の適用では、契約書や領収書などで住宅取得に充てた事実を証明できることが前提となります。

断熱や耐震の性能が高い「省エネ等住宅」の優遇とは?

非課税特例の中でもさらに優遇される建築物の分類として「省エネ等住宅」というものもあります。2025年現在、この優遇上限は最大1,000万円で、一般住宅より500万円多い額が非課税となります。

省エネ等住宅とは、省エネルギー性や耐震性、バリアフリー性などについて、国が定める省エネ等基準を満たした質の高い住宅を指す言葉です。具体的には、断熱性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上の中古住宅購入や増改築、または断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上の新築住宅購入であることが条件となります。加えて耐震等級が2以上(もしくは免震建築物)、高齢者等配慮対策等級3以上の住宅などの条件もあります。

制度を十分に活用するためには、住宅の性能要件も併せて確認することが重要です。省エネ性や耐震性の高い住宅は長期的に光熱費や修繕費の削減にもつながるので、節税対策以外にも大きなメリットがあるでしょう。

もう一つの選択肢「相続時精算課税制度」

親や祖父母から住宅取得を目的とした資金援助を受ける際は、非課税特例の他に「相続時精算課税制度」を選択する方法もあります。

この制度は生前贈与を受けた際に、1年間(1月1日〜12月31日)に受け取った贈与の総額から110万円の基礎控除が差し引かれ、さらに最大2,500万円まで贈与税が非課税となる仕組みです。非課税枠を超えた贈与は一律20%の税率で課税され、贈与者が亡くなった際に相続税で精算します。

続時精算課税制度を使うためには、税務署へ「相続時精算課税選択届出書」を提出する必要があります。この届出は贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに行わなければなりません。

※参考:国税庁.「No.4503 住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税選択の特例」. ,(参照2025-07-29).

※参考:国税庁.「No.4103 相続時精算課税の選択」. ,(参照2025-07-29).

制度の対象となる人

相続時精算課税制度を利用できるのは、贈与者が原則60歳以上の父母もしくは祖父母で、受贈者が18歳以上の子や孫である場合に限られます。ただし住宅取得を目的とした資金援助としての利用であれば、贈与者の年齢制限はなくなります。兄弟姉妹や親戚からの贈与は対象外です。

非課税特例と同様に、原則受贈者が日本に住んでいることや、贈与を受けた翌年3月15日までに受け取った資金を住宅の建設などに使うことなどの条件もあります。

将来の相続への影響

この制度では、生前に受け取った非課税の贈与分が相続時に加算され、相続税の課税対象となります。例えば制度を使って2,000万円の資金援助を受け、その後贈与者が亡くなった場合、その2,000万円も相続財産に含めて税額を計算します。つまり、生前の時点では大きな額の資金援助を受けても贈与税負担を抑えられますが、その分相続時にまとめて精算する必要があるということです。

なお一度この制度を選択すると、その後は暦年課税に戻すことができません。暦年課税とは毎年110万円まで非課税枠を使える制度で、これを利用して長期的に少しずつ贈与を行い、税負担を抑えられるケースもあります。そのため、将来の相続税への影響も考慮した上で慎重に判断することが大切です。

非課税特例を利用する際の注意点

ここからは、住宅取得等資金を受けた場合の贈与税の非課税特例に話を絞って解説します。

この非課税特例は、うまく活用すれば大きな節税効果が期待できる制度です。しかし、制度には利用条件や制約があり、それらを正しく理解せずに使うと、後になって予想外の税負担や家族間のトラブルが発生する可能性があります。主な注意点を解説します。

他の相続税軽減制度との併用が制限されている場合がある

非課税特例は、他の相続税軽減制度と同時に利用できない場合があります。例えば、贈与によって自分の持ち家を取得し要件を満たさない場合、相続時に住居や事業用宅地の評価額を大幅に減額できる「小規模宅地等の特例」の適用条件から外れます。そのため、親の住居を相続しても小規模宅地等の特例を利用することができません。

​​ただし先述した相続時精算課税制度や暦年課税とは、併用が可能です。住宅取得のためにまとまった額の資金援助を受けたい場合は、これらをうまく組み合わせるのがおすすめです。

※参考:国税庁.「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」. ,(2025-07-29).

※参考:税務署.「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」等のあらまし」. ,(参考2025-07-30).

その他の税金が発生する可能性がある

非課税特例を使うことで贈与税が免除されても、全ての税金がかからないというわけではありません。住宅の取得や登記に伴い、その他の税金が発生します。代表的なものには「不動産取得税」や「登録免許税」があり、これらは原則として非課税特例の対象外です。

不動産取得税は土地や建物を取得した際に課される地方税です。2025年7月時点では、土地と建物の場合、評価額の3%が課税されます。登録免許税は、不動産の所有権移転登記や抵当権設定登記の際にかかる国税です。

これらの税金は住宅ローンの有無や取得時期、物件の種類によって軽減措置が適用される場合もありますが、完全に免除されるわけではありません。事前に必要な税額を把握しておけば、後から予期せぬ出費に悩まされるリスクを減らせるでしょう。

※参考:総務省.「不動産取得税」.,(参照2025-07-30).

※参考:国税庁.「No.7190 登録免許税のあらまし」 ,(参照2025-07-30).

贈与が相続トラブルの火種になることも

住宅資金贈与は、多くの場合、受贈者にとって大きな助けとなりますが、他の相続人から見ると不公平感を生むことがあります。特に、兄弟姉妹の一部だけが多額の資金援助を受けているケースなどは、将来の遺産分割時に不満や対立が生じるかもしれません。

民法上では、生前贈与は「特別受益」として扱われ、相続分の計算時に贈与額を遺産に加算するルールがあります。そのため住宅資金贈与で受け取った額が多いと、相続時の取り分が減る可能性があるのです。こうした調整を巡って感情的な対立が発生し、長期にわたる相続トラブルに発展するケースもあります。

このような事態を避けるためには、事前に他の相続人にも経緯や金額を説明し、理解を得ることが重要です。場合によっては親や祖父母が遺言書を作成し、贈与や相続の方針を明確にしておくと、後の紛争リスクを大きく減らせるでしょう。

※参考:e-GOV法令検索.「民法」. ,(参照2025-07-30).

非課税特例の手続きと必要書類

住宅取得等資金を受けた場合の贈与税の非課税特例を利用するには、贈与税の申告をして必要書類を提出する必要があります。たとえ贈与税が0円になる場合でも、申告をしなければ特例は適用されません。制度を正しく活用するためには、贈与から住宅取得、そして申告までの流れを理解し、必要な書類を漏れなく準備することが重要です。

※参考:税務署.「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」等のあらまし」.,(参考2025-07-30).

手続きの流れ

非課税制度を適用するための基本的な手順は以下の通りです。

  • 贈与契約の締結
  • 住宅取得または増改築の契約・支払い
  • 住宅への入居(または入居見込み)
  • 翌年の2月〜3月に税務署で贈与税の申告・提出

 

まず、贈与を受ける時期を決め、贈与者と受贈者の間で贈与契約を結びます。この際、契約内容を明文化した「贈与契約書」を作成しておくことが望ましいです。その後、受け取った資金を使って住宅を取得または新築・増改築を行います。取得や工事が完了したら、登記や建築確認済証などの証明書類をそろえましょう。

次に、贈与を受けた翌年の2月1日~3月15日までの間に、贈与税の確定申告を行います。申告は税務署の窓口の他、e-Taxを利用してオンラインで行うことも可能です。

※参考:国税庁.「No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」. ,(参照2025-07-01).

必要な書類

非課税特例の適用申請には、多くの証明書や書類が必要です。主な書類は以下の通りです。

  • 贈与税の申告書
  • 戸籍謄本
  • 合計所得金額を明らかにする源泉徴収票などの書類
  • 居住用家屋の新築や取得の契約書の写し
  • 登記事項証明書(贈与税の申告書に不動産番号を記載する場合は不要)
  • 耐震性・省エネ性等の証明書類

 

また申告時は、通常の贈与税申告で必要な申告書第一表だけではなく、申告書第一表の二(住宅取得等資金の非課税の計算明細書)を併せて提出する必要があります。

※参考:国税庁.「住宅取得等資金の贈与税の特例に係る「チェックシート」及び「添付書類」の区分」.,(参照2025-05-23).

まとめ

非課税特例は、親や祖父母から住宅取得資金の贈与を受ける際に、かかる税金を減らせる制度です。しかし制度には細かい要件や制約があり、必要書類や確定申告の準備を怠ると適用が受けられません。しっかりと内容を確認し、抜け漏れのないように進めましょう。

なお制度をなるべく確実に活用するためには、税務の専門家や不動産のプロに相談するのがおすすめです。貝沼建設では、土地や住宅に関する豊富な知識と経験を生かし、住宅取得や贈与に関するご相談にも対応しています。制度の活用を検討している方は、ぜひお気軽にご相談ください​。

監修者:戸田 好政
役職 企画本部副本部長
資格 不動産コンサルティングマスター 宅地建物取引士 賃貸不動産経営管理士 
   管理業務主任者 2級FP技能士
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