土地活用コラム

CRE戦略とは?企業不動産を経営資源として最大限に生かす方法を解説

企業が保有する不動産は、単なる資産ではなく、経営を支える重要なリソースと位置づけられています。近年ではこうした不動産を戦略的に活用する「CRE戦略(Corporate Real Estate戦略)」の必要性が高まっており、特に遊休地や未利用地の利活用を通じて、経営効率や企業価値の向上を図る動きが加速しています。

国も企業不動産の戦略的活用を政策的に後押ししており、中小企業を含む多くの企業がCREを経営課題として認識するようになりました。

本記事ではCREの基本から具体的な活用方法、経営戦略との関係までを分かりやすく解説します。自社の不動産に眠る可能性を見直し、CRE戦略の第一歩を踏み出すきっかけとしてご活用ください。

CRECorporate Real Estate)とは?

企業が保有・利用する不動産を、単なる固定資産としてではなく、戦略的な経営資源として捉える考え方が「CRE戦略」です。CREとは、Corporate Real Estateの略で、オフィス・倉庫・工場・社宅など、企業活動にかかわる不動産全般を指します。

従来、不動産は経理上の資産に過ぎませんでしたが、近年では経営効率や収益力の向上を目指し能動的に活用する「CRE戦略」が注目されています。国土交通省によるCRE戦略の定義は

"企業不動産について「企業価値向上」の観点から経営戦略的視点に立って見直しをおこない、不動産投資の効率性を最大限向上させていこうという考え方"

です。

実際に、不動産の統廃合や転用、売却・賃貸によってキャッシュフローの改善を図る動きは広がりつつあります。

※引用:国土交通省.「CRE戦略実践のためのガイドライン」 ,(参照2025-07-24).

企業不動産の定義と活用意義

CREにおける企業不動産とは、自社の事業活動に関連して保有・利用している不動産全てを指すのが一般的です。オフィスや営業所、工場、倉庫、店舗、社宅、さらには未利用地や遊休地も含まれます。

こうした不動産は、単に所有しているだけでは価値を生みません。ところが経営の視点で見直すことで、以下のような効果をもたらす可能性があります。

  • 不動産収益の増加(賃貸・転用)
  • 経費削減(保有コストの圧縮)
  • 企業ブランドや地域との関係強化

例えば使用していない建物や土地を外部に貸し出したり、新たな用途に転用したりすると、不動産収益の向上が期待できます。また重複施設の統廃合や管理体制の見直しによって、保有コストを削減することも可能です。さらに、地域に根ざした不動産活用を進めれば、企業のブランド価値や地域との信頼関係を高める効果もあります。

このようにCREは経営資源としての位置付けを強めており、企業競争力を支える要素として再評価されています。

※参考:CRE 研究会.「CRE 戦略実践のためのガイドライン」,(参照2025-07-24).

遊休地・未利用地の活用方法

CRE戦略を進めるに当たり手始めに取り組みやすいのが、事業に直接使われていない遊休地や未利用地の活用です。これらの土地は、活用方法次第で新たな収益源や地域との接点になり得ます。

具体的な活用方法には、以下のような選択肢があります。

  • 商業施設、物流施設、賃貸用地としての開発・賃貸
  • シェアオフィス、スタートアップ支援拠点などの共用空間化
  • 売却による現金化・資産圧縮

遊休地や未利用地を活用することで、より健全な経営を目指せるだけではなく、企業イメージの向上や地域貢献にもつながるでしょう。

※参考:国土交通省.「企業による不動産の利活用について」,(参照2025-07-24).

CRE戦略が注目される理由:国も推奨する背景と目的

少子高齢化や人口減少が進み続けている近年の日本では、限られた経営資源をいかに効率良く活用するかが大きな課題です。その中で、企業が保有する不動産を戦略的に見直す「CRE戦略」は、経営効率の向上や企業価値の最大化を目指す手段として注目されてきています。

この動きに対し、国も政策的な支援を強めています。国土交通省は企業の不動産活用を後押しするためのガイドラインや調査報告を公表しており、その結果、中小企業にもCREの考え方が広がりつつあります。経営資源の有効活用を通じ、収益力と持続可能性の両立を図るという視点は、今後ますます重要となっていくでしょう。

※参考:CRE 研究会.「CRE 戦略実践のためのガイドライン」,(参照2025-07-24).

※参考:国土交通省.「企業不動産の合理的な所有・利用に関する研究会 (CRE研究会)報告書の公表について」 ,(参照2025-07-24).

キャッシュフローの強化と資産圧縮

企業が保有する遊休不動産は、収益を生まない状況でありながら、固定資産税や維持管理費といったコストが継続的に発生します。先述の通り、こうした不動産を見直し賃貸用地や商業施設として活用すると、新たな収入を得ることが可能です。また売却によって現金化をすれば、資産の圧縮や全体的な収益性の改善にもつながります。

資産を流動化して得られた資金は、研究開発や新規事業への投資など、成長戦略への再投資に活用できるでしょう。CRE戦略では、不動産を「保有コストがかかるだけのもの」と捉えるのではなく、「収益を生む経営資源」として転換していくことが重要です。こうした視点の転換により、キャッシュフローが安定し、財務体質の改善にもつながると期待されます。

経営リスクの分散と事業継続性の改善

不動産を戦略的に活用することは、企業のリスクマネジメントにも直結します。本社や工場などの主要拠点が特定の地域に集中していると、地震や洪水などの自然災害が発生した際に業務が停止するリスクが高まります。こうしたリスクを回避するためには、施設や業務拠点を複数の立地に分散させる取り組みが重要です。

また近年では、BCP(事業継続計画)を意識した不動産戦略も求められています。例えばサテライトオフィスや代替拠点を確保すると、有事の際でも業務を継続しやすくなります。

このように、CRE戦略を通じて不動産配置を最適化することは、事業の安定性や回復力を高める有効な手段と言えるでしょう。

企業イメージの向上・ブランディング

CRE戦略の効果は、収益やリスク対応だけにとどまりません。不動産活用の内容によっては、企業の姿勢や価値観を社会に示すことができ、企業イメージの向上やブランディングにも寄与します。

例えば、地域と連携してコミュニティセンターや子育て支援施設などを整備したり、環境負荷の少ない建築資材を導入したりすると、社会課題への取り組みを明確に表現できるでしょう。特に近年は、ESG(環境・社会・ガバナンス)やSDGs(持続可能な開発目標)への対応が企業評価の要素とされています。CRE戦略においても、これらの視点は欠かせません。

CRE戦略を通じて単なる不動産の有効活用を超えた「社会との接点づくり」が実現すれば、企業の信頼性は高まり、長期的な評価にもつながっていくと考えられます。

※参考:経済産業省.「SDGs経営ガイド」,(参照2025-07-24).

CRE戦略のマネジメントサイクルとは?

CRE戦略を実効性のあるものにするには、計画から運用、評価までを一貫したプロセスで管理することが重要です。具体的には「現状把握 → 企画・立案 → 実行・運用 → 検証・改善」のサイクルの繰り返しによって、不動産の価値を最大限に引き出します。

このようなPDCA型のマネジメントサイクルを導入すれば、経営戦略と不動産戦略の整合性を確保し、時代や事業環境の変化に応じた柔軟な対応が可能です。CRE戦略は一度策定して終わるものではなく、継続的な改善が成果を左右するポイントだと言えるでしょう。

ここでは具体的な手順について解説します。

※参考:CRE研究会.「CRE戦略を実践するための ガイドライン」 ,(参照2025-07-24).

※参考:CRE研究会.「CRE戦略を実践するための手引き(資料集)」 ,(参照2025-07-24).

現状把握

CRE戦略の出発点は、自社が保有・利用している不動産の現状を正確に把握することです。不動産の立地や面積、用途、築年数、稼働率、収支状況、賃貸契約の有無など、あらゆる情報をデータとして収集・整理する必要があります。

見落とされがちなのが、社宅や保養所、研修施設、あるいは一時的に未利用となっている資産です。こうした施設も含めて全社的に棚卸しを行い、保有不動産の全体像を可視化することが、CRE戦略の基礎を築く第一歩となります。

また現地調査だけではなく、図面や登記簿、公的資料なども活用し、定量的・定性的な分析を行うことも重要です。この段階での精度が、立案や実行といった次のステップの質に大きく影響します。

企画・立案

不動産の現状を把握したら、次に行うべきは、戦略に基づいた企画と中長期的な計画の立案です。この段階では、不動産の統廃合や用途転換、賃貸・売却といった多様な選択肢を検討します。単にそれぞれの物件を個別に判断するのではなく、経営目標や事業方針との整合性を踏まえた上で、全体戦略を構築する必要があります。

例えば営業拠点を都市部に集約するのか、郊外に移転してコストを抑えるのかといった判断は、事業展開の方向性や人材配置、将来的なリスク対策にも関わる重要な要素です。そのため、経営企画部門と不動産管理部門が連携し、部門横断的に計画を策定する体制が不可欠となるでしょう。

またこのフェーズでは、社内外のステークホルダーとも調整を図りながら、現実的かつ実行可能な戦略案を形にしていくことが求められます。単なる費用対効果だけではなく、地域性や自社の事業特性も考慮する必要があるはずです。例えば新規事業との整合性、グループ全体での資産最適化、さらにはCSRやSDGsといった社会的価値への貢献度なども、重要な評価軸となると考えられます。

実行・運用

企画・立案された戦略を基に、具体的な施策を推進する段階が「実行・運用」です。このフェーズでは建物の改修工事や賃貸契約の締結、新規施設の開発など、実務的な手続きが中心となります。

手続きを進めるのと同時に、実行体制の整備もしっかりと行いましょう。例えば社内の運営責任者を明確にし、外部の管理会社や施工業者との連携スキームを確立することで、実務の円滑化が図れます。また定期的なモニタリングや報告体制を整えれば、進捗の管理や課題の早期発見が可能となります。

不動産の運用段階では、経済環境や地域ニーズの変化に合わせた柔軟な対応が求められるケースも多いです。あらかじめ対応方針を想定しておくと、安定的な運用に結びつくでしょう。

検証・改善

戦略を実行・運用した後は、その成果を検証し、次の改善へとつなげる段階に進みます。このプロセスはCRE戦略の成熟度を高め、将来にわたる経営の安定性と柔軟性を生む、重要な要素です。

評価の観点としては、不動産の収益性や稼働率、維持コストの削減効果、経営全体への貢献度などが挙げられます。ROI(投資利益率)やROA(総資産利益率)といった指標を用いて、定量的な評価を行う方法が有効です。

また施策の結果を社内で共有し、評価制度や業績指標に反映させることで、組織としてのCRE戦略推進力を高められます。必要に応じて戦略を見直し、次なる現状把握と企画へとサイクルを進めれば、継続的な改善プロセスが確立されていくでしょう。

改善に当たっては、第三者の視点を取り入れる方法も効果的です。不動産の専門家やコンサルタントからフィードバックを受けたり、業界のベンチマークと比較したりすることで、自社のCRE戦略の位置づけを客観的に確認できます。改善の方向性をより明確にできるケースもあるでしょう。

経営戦略とCRE戦略の関係

CRE戦略は、単体で完結する施策ではなく、企業の経営戦略と密接に連動して進めるべき取り組みです。不動産をどう活用するかは、事業の競争力や資本効率に影響を及ぼす可能性が高いため、経営判断の一環として統合的に考える必要があります。

また財務戦略や人材戦略、事業ポートフォリオの見直しといった他の企業戦略とも、整合性を取りながら進めることが大切です。各戦略をしっかりと考慮すれば、不動産が本来持つポテンシャルを最大限に引き出せるでしょう。

※参考:CRE研究会.「CRE戦略を実践するための ガイドライン」,(参照2025-07-24).

CRE戦略を経営戦略に組み込むには?

CRE戦略を経営全体に組み込むためには、経営トップの強いリーダーシップが不可欠です。単なる不動産部門の効率化にとどまらず、全社的な取り組みとしてCRE戦略を位置づけることで、部門間の連携が促進され、意思決定のスピードや実行力が高まります。

実際の推進にあたっては、経営企画部門と不動産管理部門が連携し、経営目標と不動産戦略との整合性を図る体制を構築することも重要です。これにより不動産の最適配置だけではなく、将来的な拠点拡大や撤退、地域再編といった長期的な経営計画においても、CREの視点が生かされるでしょう。

また、GIS(地理情報システム)や不動産管理クラウドのようなITツールを活用すれば、所有資産の立地・稼働状況・将来予測などを可視化し、客観的な判断を促進できます。

経営戦略に合った不動産を獲得・運用するには?

CRE戦略は、既存の不動産資産を活用するだけではなく、将来の事業展開に必要な不動産を「戦略的に獲得・整備」するという視点も欠かせません。新しい拠点の確保や老朽化した施設の建て替え、都市部からの移転など、企業のライフステージに応じた柔軟な対応が求められます。

その際には、官民連携やPFI(民間資金を活用した公共施設整備)などの手法を活用するのも有効です。またCRE戦略に精通したコンサルタントや専門業者と協力すれば、土地取得や施設整備の検討段階から、経営目線での助言を得ることができるでしょう。

こうした外部資源を活用しながら、自社にとって最適な立地・機能を持つ不動産を計画的に確保・運用すると、より強固な経営基盤を築くことが可能です。

※参考:国土交通省.「CRE・PRE等の推進」,(2020-03-10).

※参考:CRE研究会.「CRE戦略を実践するための手引き(資料集)」,(参照2025-07-24).

まとめ

CRE戦略は、企業が保有する不動産を「眠れる資産」から「稼ぐ経営資源」へと転換する考え方です。オフィスや倉庫、工場といった施設を単に保有するのではなく、戦略的に配置・活用することで、経営効率の向上や収益力の強化を実現できます。

特に遊休地の利活用や拠点の再編は、CRE戦略の中核をなす取り組みとなるでしょう。これらを単発の施策で終わらせず、「現状把握 → 計画立案 → 実行 → 検証・改善」といったマネジメントサイクルを継続的に回していくことが、真に機能するCRE戦略の条件と言えます。

またCRE戦略はそれ単体の問題ではなく、経営戦略や財務、人材配置、リスクマネジメントといった他領域との連携が不可欠なものとして捉えることも大切です。経営トップの関与と全社的な推進体制を整えれば、不動産を通じて、企業価値の向上を実現できる可能性があります。

とはいえ自社での対応が難しい場合や、CRE戦略の検討を始めたばかりで何から手を付ければ良いのか分からないという場合もあるかもしれません。そのようなときは、不動産の棚卸しから実施し、自社の経営課題と不動産の現状を照らし合わせてみることから始めましょう。必要に応じて、専門家のアドバイスを受けるのも有効な手段です。

貝沼建設では、企業ごとの課題に応じた不動産活用の支援を行っており、調査・企画から開発・運用まで一貫したサービス提供を行っています。これからCRE戦略に着手したいとお考えの企業のご担当者さまは、ぜひ一度ご相談ください。

監修者:市川 裕恭
CFP 宅地建物取引士 賃貸不動産経営管理士
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