土地活用コラム
土地の贈与税はいくらかかる?課税制度の仕組みや節税のポイントを分かりやすく解説
両親や親族などから土地を譲り受けた際、譲り受けた人に対して贈与税が課税されます。しかし、贈与税がいくらかかるのか把握していない方も多いのではないでしょうか。贈与税の税額は、どの課税制度を使用するかによって異なります。
本記事では、土地を譲り受けた際に発生する贈与税の基礎知識や課税制度、節税方法などを解説します。
土地の贈与税とは? いくらから課税される?
土地の贈与税とは、両親や親族などから無償で土地を譲り受けた際に課税される税金です。そもそも贈与とは、贈与する人が生きているうちにお金や土地などの財産を無償で引き渡すことを意味します。
贈与を成立させるには、贈与する側と譲り受ける側の双方が合意していることが前提です。例えば、贈与者の意思だけで受贈者に財産を引き継がせた場合、その財産は相続財産となります。
また贈与があったと認められるには、受け取った人が自分で財産を管理・使用できる状態でなければなりません。例えば、子ども名義で通帳を作っていても、子ども自らが通帳や印鑑を管理している場合にのみ贈与と見なされます。
贈与税がいくらになるかは、暦年課税制度か相続時精算課税制度かどちらを使うかによって変わります。暦年課税制度を選んだ場合は、1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産が110万円を超えると、超えた部分に対して贈与税が課税されます(※)。
一方、相続時精算課税制度では、累計で2,500万円までの贈与には贈与税がかかりません。2,500万円を超えた部分が課税対象となります(※)。
それぞれ特徴や注意点があるため、どちらか選択する際は贈与する目的や将来の相続も見据えた上で判断する必要があります。
※参考:国税庁.「No.4402 贈与税がかかる場合」. ,(参照2025-04-13).
土地の贈与税がかかる5つのケース
贈与税がかかる主なケースは、以下の5つです。
- 無償で譲り受けた土地の名義を変更したとき
- 相場より極端に安い価格で土地を譲り受けたとき
- 共有名義の土地を個別で登記し直したとき
- 共有名義の土地で持分を変更したとき
- 借金返済目的で負担付贈与を受けたとき
無償で譲り受けた土地の名義を変更したとき
誰かから無償で譲り受けた土地の名義を変更した場合、贈与税が発生します。たとえ現金のやり取りがなくても、土地の所有権を無償で移した場合、税務署は「財産をもらった」と判断します。
名義だけを変更する場合、税務上は贈与として処理されるため十分な注意が必要です。
相場より極端に安い価格で土地を譲り受けたとき
両親や親族などから相場より極端に安い価格で土地を譲り受けた場合、その差分が贈与税の課税対象になります。
例えば、時価が3,000万円の土地を500万円で譲ってもらった場合、差額の2,500万円に贈与税がかかる仕組みです。
ただし、相場より安いとされる金額が具体的にいくらなのか、法律上に明確な基準は設けられていません。一般的には時価の約80%の価格であれば、贈与と認定されないといわれています。
共有名義の土地を個別で登記し直したとき
共有名義の土地を個別に登記し直した場合、元々の持分を超えて土地を取得した人がいれば贈与税がかかります。
共同で所有していた土地を複数に分割し、単独名義にすることを分筆といいます。このときに受け取る土地の評価額が元の持分より大きくなると、その差額が贈与と見なされる仕組みです。
例えば、2,000万円の土地をAが1400万円、Bが600万円の持分で共有していたとします。この土地を半分に分筆し、それぞれが50%ずつの区画を取得した場合、AとBの所有分はどちらも1,000万円です。
このとき、BがAから400万円分の土地を無償で譲り受けたと見なされるため、この差額が贈与税の課税対象となります。
共有名義の土地で持分を変更したとき
共有名義の土地で持分を無償で変更したときも、贈与税がかかります。
前述の個別に登記し直す(分筆する)ケースとは異なり、土地そのものの所有者は共有名義のまま、登記上の持分だけを変更することを指します。例えば、AとBで50%ずつ所有していた2,000万円の土地の持分を、Aが70%、Bが30%に変更するなどです。
登記上の数字を変更するだけであっても、実質的な利益が生じていれば課税対象になるため、名義整理は慎重に行いましょう。
借金返済目的で負担付贈与を受けたとき
贈与と同時に借金などの負担も引き継いだ場合、その土地の評価額から負担額を差し引いた残りが贈与税の課税対象になります(※)。このような贈与は、負担付贈与と呼ばれています。
例えば、評価額2,000万円の土地に1,500万円の借金が残っている場合、差額分の500万円に贈与税がかかる仕組みです。
借金を受け継いでいるため税金を支払う必要はないと判断しがちですが、土地の価値が負担額より大きい場合は税負担が発生します。
※参考:国税庁.「No.4426 負担付贈与に対する課税」. ,(参照2025-04-13).
贈与税の算出に必要な土地評価額の計算方法
贈与税を算出するには、土地の評価額を正しく把握する必要があります。土地評価額とは、贈与された土地が税務上どれくらいの価値を持つかを示す金額のことです。税額を決める基準となるものであり、以下いずれかの評価方式に応じて計算します。
- 路線価方式
- 倍率方式
路線価方式
路線価方式とは、国が毎年発表する路線価図に従って評価額を決定する方式です。路線価とは、道路に面した1平方メートル当たりの土地の評価額のことで、国税庁が地域ごとに設定しています。
贈与対象の土地に路線価が設定されていれば、以下の計算式で評価額を算出します。
- 1平方メートル当たりの路線価×補正率×土地の総面積=土地の評価額
路線価は、国税庁の「路線価図・評価倍率表」で確認することが可能です。まず、トップページで贈与対象の土地がある都道府県を選択し、上部の「路線価図」をクリックします。市区町村の一覧が表示されたら、該当する地域のページにアクセスして路線価を確認してみましょう。
補正率とは、土地の形状や条件に応じて評価額を調整するための係数です。例えば、形がいびつな場合や間口が狭く奥に長い形状の土地などは、一般的な整形地よりも価値が下がると判断されます。このような場合、路線価に補正率をかけて実際の利用価値に見合った評価額に調整します。
※参考:国税庁.「路線価図の説明」. ,(参照2025-04-13).
※参考:国税庁.「No.4602 土地家屋の評価」. ,(参照2025-04-13).
※参考:国税庁.「財産基準書 路線価図・評価倍率表」. ,(参照2025-04-13).
倍率方式
倍率方式とは、路線価がない地域で採用される評価方式です。固定資産税評価額に一定の倍率をかけて評価額を算出します。
例えば、固定資産税評価額が1,000万円、倍率が1.3の土地評価額の計算式は、以下の通りです。
- 1,000万円×1.3=1,300万円
固定資産税評価額は、自治体から送られてくる固定資産税納税通知書や市役所にある固定資産課税台帳で確認してみましょう。
倍率は、国税庁の「路線価図・評価倍率表」から該当する地域のページにアクセスし「この市区町村の評価倍率表を見る」をクリックすれば確認できます。
※参考:国税庁.「No.4602 土地家屋の評価」.,(参照2025-04-13).
※参考:国税庁.「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」.,(参照2025-04-13).
土地の贈与に適用される2つの課税制度と注意点
土地の贈与に適用される課税制度は、以下の2種類です。
- 暦年課税制度
- 相続時精算課税制度
それぞれに特徴があり、控除額や課税方法などが異なります。以下で制度ごとのメリットや注意点を比較しましょう。
暦年課税制度|年間の贈与合計額で税額を計算する
暦年課税制度は、1年間(1月1日~12月31日)の間に贈与された財産の合計額に対して課税される制度です(※)。
年間110万円の基礎控除が設けられているため、贈与された財産の合計が年間110万円であれば贈与税は発生しません。そのため、110万円までの贈与を何年かに分けて少しずつ行いたい人に適している制度です。
例えば、ある年の贈与財産の合計が100万円であれば贈与税がかかりませんが、150万円であれば110万円を超えた40万円に対して課税されます。
暦年課税制度を選んだ場合、以下の計算式で贈与税額を算出します(※)。
- (贈与財産の合計-基礎控除額110万円)×税率=贈与税額
税率は、一般贈与か特例贈与かによって異なります。一般贈与とは、夫婦間や兄弟姉妹間での贈与、親族以外の第三者などから財産を受け取ることです。
一方、特例贈与とは、父母や祖父母など直系尊属から18歳以上の子や孫に対して行われる贈与のことです(2022年3月31日以前の贈与に関しては20歳以上)。
以下の表は、それぞれの税率と控除額をまとめたものです。
【一般贈与の税率・控除額】(※1)
基礎控除後の課税価格
(贈与財産の合計-基礎控除額110万円) |
税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | なし |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円以上 | 55% | 400万円 |
【特例贈与の税率・控除額】(※2)
基礎控除後の課税価格
(贈与財産の合計-基礎控除額110万円) |
税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | なし |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円以上 | 55% | 640万円 |
このように、基礎控除額110万円はどちらの制度でも共通ですが、税率と控除額は課税価格に応じて変動します。
例えば、贈与財産の合計が500万円だった場合、以下の計算式で贈与税額を算出します。
- 一般贈与:(500万円-110万円)×30%-65万円=52万円
- 特例贈与:(500万円-110万)×20%-30万円=48万円
誰と誰の間で贈与が行われるのかを把握し、税額がいくらくらいになるのかを計算してみましょう。
※1参考:国税庁.「財産をもらったとき」. ,(参照2025-04-13).
※2参考:国税庁.「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」. ,(参照2025-04-13).
暦年課税制度は定期贈与と判断される可能性がある
暦年課税制度は年間110万円までの贈与なら贈与税がかからないため、毎年少しずつ財産を渡したい場合に適している制度です。
しかし、契約内容によっては定額贈与と判断されてしまい、非課税枠が適用されない可能性があります。例えば「毎年100万円ずつ10年間にわたって贈与する」と契約を交わしていた場合、10年後に合計1,000万円を一括で受け取ったとしても贈与税が課されてしまうのです(※)。
暦年課税制度を使って毎年非課税で贈与を受けたい場合は、1年ごとに契約が成立していると書面で示す必要があります。贈与するごとに契約書を作成したり、贈与の金額や振込日をずらしたりと、定額贈与だと見なされないための工夫をしましょう。
※参考:国税庁.「No.4402 贈与税がかかる場合」. ,(参照2025-04-13).
相続開始前3~7年以内の贈与は相続財産に加算される
相続開始前3~7年以内に行われた贈与は、相続財産に加算しなければなりません。これまでは、被相続人が亡くなる3年以内の贈与だけが相続財産の加算対象でしたが、2023年の税制改正によって加算対象期間が7年に延長されました。
すぐに7年以内の贈与が対象となるのではなく、2023年から2031年にかけて段階的に7年に引き延ばされていく仕組みです。相続財産が高額であるほど相続税も高くなり、税負担が大きくなる可能性があります。
ただし、相続開始前3~7年以内に行われた贈与については、合計100万円までの部分は相続財産に加算されません。
※参考:国税庁.「令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし」. ,(参照2025-04-13).
相続時精算課税制度|相続時にまとめて清算する制度
相続時精算課税制度とは、1年間の贈与の合計額を一定の税率で計算しておき、相続が発生したときにまとめて精算する制度です。
この制度を利用できるのは、贈与する年の1月1日時点で60歳以上の父母または祖父母が、18歳以上の子や孫に贈与する場合に限られます(※1)。
贈与額が累計2,500万円までであれば非課税となり、超えた分に対しては一律20%の税率で贈与税が課されます(※1)。2024年1月からは暦年課税制度と同様に、年間110万円の基礎控除も利用できるようになっています(※2)。
相続時精算課税制度における贈与税の計算式は、以下の通りです。(※1)
- {(贈与財産の合計-基礎控除110万円)-2,500万円}×20%=贈与税
例えば、贈与財産が3,000万円のときの贈与税は、以下の計算式で78万円となります。
- {(3,000万円-110万円)-2,500万円}×20%=78万円
一度相続時精算課税を選ぶと、後から暦年課税に戻せないため、慎重に選択しましょう。
※1参考:国税庁.「財産をもらったとき」. ,(参照2025-04-13).
※2参考:国税庁.「令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし」.,(参照2025-04-13).
相続時精算課税制度は事前に届出を提出する必要がある
暦年課税制度は自動的に適用されますが、相続時精算課税制度は申告制で利用できる制度のため、事前に届出を提出する必要があります。贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日(贈与税の申告期間内)までに、相続時精算課税選択届出書を最寄りの税務署に提出しましょう(※1)。
届出書と併せて、贈与する人と贈与を受ける人の戸籍謄本なども提出する必要があります。詳しくは、国税庁の「相続時精算課税選択届出書に添付する書類」をご確認ください(※2)。
※1参考:国税庁.「財産をもらったとき」. ,(参照2025-04-13).
※2参考:国税庁.「No.4304 相続時精算課税選択届出書に添付する書類」. ,(参照2025-04-13).
小規模宅地等の特例は適用不可となる
相続時精算課税を使って土地を生前に贈与した場合、小規模宅地等の特例が使えなくなります。小規模宅地等の特例とは、被相続人の自宅や事業用の土地を相続する際にかかる相続税を最大80%軽減できる制度です(※)。
しかし、この特例が使えるのは相続や遺贈によって取得した土地に限られるため、生前贈与は対象外となります。将来的にかかる相続税を踏まえた上で、相続時精算課税制度を選択するかどうかを検討しましょう。
※参考:国税庁.「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」.,(参照2025-04-13).
土地の贈与税を節税するには? かからないようにする方法はある?
贈与税をできるだけ抑えたい場合は、制度の仕組みや非課税となる条件を把握しておくことが大切です。ここでは、土地の贈与税の代表的な節税方法を2つ紹介します。
相続時精算課税制度を選択する
相続時精算課税制度を利用すれば、年間110万円の控除に加えて、累計2,500万円までの贈与が非課税となります(※)。
暦年課税制度はシンプルで分かりやすい一方、毎年の贈与額が110万円を超えると、その年ごとに贈与税がかかります。高額な贈与が複数年にわたって続く場合は税負担が大きくなるため、非課税枠が多い相続時精算課税制度の利用を検討しましょう。
ただし、贈与した分も相続財産に加算しなければならないため、後から相続税がかかることも頭に入れておきましょう。
※参考:国税庁.「財産をもらったとき」.,(参照2025-04-13).
配偶者控除を活用する
夫婦間での贈与で一定の条件を満たす場合は、贈与税の配偶者控除の活用も検討してみましょう。以下の条件を満たしている場合、基礎控除110万円に加えて2,000万円までの控除を受けられます(※)。
- 婚姻期間が20年以上経過する夫婦間での贈与であること
- 居住用住宅の贈与であること
- 贈与する住宅に翌年3月15日までに住み始め、今後も住み続ける見込みがあること
適用には贈与税の申告が必要となるため、必要書類や手続き方法を事前に確認しておきましょう。
※参考:国税庁.「No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」.,(参照2025-04-13).
土地の贈与税は工夫次第で節税できる
土地の価値は現金と違って算出しにくいため、事前に節税対策や評価方法を把握しておかないと、想像以上の贈与税がかかる可能性があります。
課税方式は、暦年課税制度と相続時精算課税制度の2種類ですが、それぞれ仕組みや特徴、注意点が異なります。贈与額や将来的な相続税、控除制度を考慮した上で、適した方法を選択しましょう。
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