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土地活用コラム

相続分を指定された人が、遺言者より先に亡くなった場合の遺言の効力 

今回は実際に相談に来られた方が誤解をしていた事例の紹介です。

1.事案
令和6年に相談者の母親の姉(相談者の伯母)が亡くなりました。
伯母と母親は仲が良く、伯母は独身なので、自分の遺産は妹である母親に全部相続させるという遺言書を、平成20年に公正証書で作成していました。
しかし、伯母はその後アルツハイマーとなり、令和2年からは施設に入所していました。
そうしたところ、令和5年に母親が急死してしまいました。
母親の法定相続人は、私(相談者)と私の妹の2人です。伯母は5人兄弟姉妹です。
伯母の身の回りの世話は、母親と私たち姉妹でずっとやってきました。
この場合、伯母の遺産は、母親の相続人である私たち姉妹が、半分ずつ相続できるのでしょうか?
主な遺産は預貯金(3000万円)です。

 

2.基本規則1-伯母の法定相続人は?
① 第1順位は、伯母の両親となります。なお両親が相続人になるのは亡くなった人に子どもや孫がいない場合のみです。
② 伯母の両親がいずれも亡くなっている場合は、第2順位として、伯母の兄弟姉妹となります。
③ ②の場合で、伯母の兄弟姉妹で伯母より先に亡くなっている人がいる場合は、亡くなっている兄弟姉妹の子(叔母からすると甥か姪)は「代襲相続」します。

ちなみに「代襲相続」とは、被相続人が死亡した時に、本来相続人となるはずであった人が先に死亡するなどをしていた場合に、その子などが代わって相続する制度をいいます。

 

3.基本規則2-法定相続分は?
便宜上、伯母の兄弟姉妹のうち、亡くなっている人については子どもがいるとします。
①兄弟姉妹が5人なので、法定相続分は5分の1ずつとなり、本件だと1人600万円となります。
②先に兄弟姉妹が亡くなっており、その兄弟姉妹の子(甥と姪)が3人いる場合は、甥と姪は1人200万円となります。

 

4.基本規則3-遺留分割合は?
①法定相続人が、第1順位の両親の場合は、両親は遺留分という権利(遺言でも奪うことができない最低限の取り分)があります。
親だけが相続人のケースにおける遺留分は財産の3分の1なので、
親が1人存命の場合には3分の1、2人存命の場合には1人当たり6分の1となります。
②法定相続人が、第2順位の兄弟姉妹の場合は、遺留分は認められておらず、請求できません。

5.そうすると?(誤解の内容)
①遺言で、相談者の母親に全部相続させるとなっているのだから、
母親が亡くなった今の段階では、母親の法定相続人が2分の1ずつ「代襲相続」できるのではないか?


②しかも、兄弟姉妹には遺留分が認められないのだから、丸々半分ずつ伯母の遺産をもらえるのではないか?

③母親と私たち姉妹で伯母の面倒を見てきたのだから、それは当然のことではないか?

6.現実は?
残念ながら、先に母親が亡くなっている以上、母親の相続分を指定した遺言の部分は、母親が亡くなった時点で無効となってしまいます。
法律的には、「遺言」の場合にも、代襲相続が発生するのかという問題なのですが、
最高裁判所は「遺言には代襲相続が適用されない」と判断しました(最判平成23年2月22日)。
つまり、本件のケースでは「母親の子どもである相談者姉妹は代襲相続できず、兄弟姉妹5人で相続する」という結論になります。
なお、遺言全部は無効になるのではなく、無効になるのは故人を指定している部分のみです。


7.介護してきたことに対する功労は?
「寄与分」という制度があるので、介護をしてきた姉妹には、遺産が増額されるのではないかと思われるかもしれません。
しかし、介護をしてきたというだけでは裁判所ではなかなか認められず、例えばずっと在宅介護をしてきたことにより、施設入所に要する支出を免れたことで遺産を維持したというような具体的な事情が必要となります。

 

 

8.今回の教訓として
①相続の指定をした受遺者が先に亡くなった場合は、遺言書の書き直しを検討する。
②妻や兄弟姉妹など、自分と同世代の人に相続させたい場合は、自分より先に亡くなった場合のことも想定して、遺言書を作成することです。
特に遺言者が認知症になるなど判断能力が無くなってしまうと、①の遺言書の書き直しはもはやできないことになります。
③その他にも、例えば先祖代々の土地をどうしても長男家族に継がせたい場合には、長男に相続させる。
長男が遺言者より先に亡くなった場合は、長男の子(要するに孫)に相続させる。」というような遺言をすることも「争」続回避策の一つとなります。
また、「民事信託」の利用も効果的です。

 

 

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