土地活用コラム

賃貸借契約書完成前の、貸主からのキャンセルについて

オーナーが仲介業者に依頼して募集をかけている物件に、入居希望者が申し込みをし、申込金を支払いました。その後、保証会社による審査も通ったので正式に契約をする運びとなり、仲介業者店舗において、仲介業者があらかじめ用意した契約書に、入居希望者は署名と押印をしました。貸主側については空欄のままで、後日貸主が押印したものを借主に渡すことになっていました。そして入居希望者は、仲介業者から伝えられていた仲介手数料や保証金などその場で支払いました。鍵の受け渡し契約開始日である翌月1日を予定し、入居希望者は引っ越しに向けて引っ越し業者の手配などをしました。しかし、オーナーが翻意し、自分はまだ契約書に押印していないから契約は成立していないので、この物件を貸す義務はないから鍵も渡さないなどと言い始めました。このようなオーナーの言い分は認められるのでしょうか。

 

 

1.契約はいつ成立するのか?

口約束でもお互いの意思が合致すれば契約は成立します。しかし、相手と揉めたようなときは、「口約束では成立していないのと同じ」ということになります。不動産賃貸借の場合、契約期間が年単位であり、月額家賃も万単位であることから、通常は「賃貸借契約書」を取り交わすのが一般的な取引慣行です。そうすると、賃貸借契約では、賃貸借契約書に「貸主と借主が互いの署名・押印が揃ったとき」が契約の成立となります。

 

2.不動産賃貸借の特殊性

もっとも、不動産賃貸借で仲介業者が関与している場合、貸主と借主が一堂に会して賃貸借契約書を取り交わすことは、まずありません。

 

 

ここで一番大事なのは⑥貸主の署名押印となりますが、どの段階で貸主が署名押印した契約書が借主に交付されるかは、ケースバイケースといえます。⑦鍵の引渡しのときもあれば、⑧入居後に渡されることもあります。しかし、借主側からすれば、自分が署名押印した契約書を仲介業者に交付し、初期費用の納付も完了すれば、もはや賃貸借契約が成立したと考えるのが通常と思われます。にもかかわらず、貸主が契約書に署名押印していないことにかこつけて、契約を一方的に破棄されるというのは、借主側にあまりにも酷なこととなり不公平と思われます。

3.契約が成立したと信じていた借主側の保護について

このように賃貸借契約が成立したと信じ、信じたことに落ち度がない借主を保護するために、貸主側には「契約締結上の過失」があるとして、直前に契約拒否された借主には、損害賠償を請求することが判例上認められています。

 

 

4.貸主側が負担すべき「損害」の範囲は?

①借主側が支払った初期費用

これは全額返還することは当然のことです。仲介手数料は仲介業者、保証料は保証会社が返金することになります。

②各種キャンセル料

初期費用を支払い、その後引越業者やネット配線工事を手配したものの、キャンセルしたことによってキャンセル料が発生した場合には、キャンセル料相当額は損害として貸主側の負担となります。

③新たな入居先確保までの仮住まい費用

これについて、当然に認められるものではありませんが、借主側が初期費用を支払ってから貸主側が拒否するまでの期間や、拒否日から契約開始日までの期間、借主側の家族構成などにより、ケースバイケースといえます。

5.居住用建物ではなく、店舗用建物の場合は?

ここまでは居住用建物を前提とした解説となりますが、店舗用建物でも同様の問題があり得ます。もっとも、店舗用建物となると、開業に向けた内装工事発注や什器備品の購入、従業員採用など契約成立を前提とした準備行為が格段に増えますし、開業が遅れたことによる休業損害という問題も発生しかねません。店舗用建物であれば、拒否するかどうかは、なおさら慎重に判断する必要があります。

 

 

6.まとめ

設問の場合、「契約は成立していないから貸さない」というところまでは認められます。しかし、貸さなかったことによる「しっぺ返し」は覚悟する必要があるということになります。このような事態にならないように、オーナーとしては仲介業者と意思疎通を十分にする必要がありますし、借主側から契約書と初期費用を受領したら(オーナー自身ではなく仲介業者であっても)契約は成立したと腹をくくることが大事です。

 

 

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