土地活用コラム
土地活用における一括借り上げとは?メリット・デメリットや成功のためのコツをご紹介
一括借り上げとは、土地や建物を賃貸事業者が一括して借り上げ、オーナーに一定の賃料を保証する仕組みの土地活用方法です。入居者募集や賃貸管理を業者が担うため、オーナーは安定した収入を得ながら管理負担を軽減できます。
多くのメリットがある一括借り上げですが、契約条件によっては収益性が低下したり、途中解約のリスクが生じたりするケースもあるので、仕組みや特徴を十分に理解しておくことが大切です。
本記事では、一括借り上げのメリット・デメリット、代表的なリスクを分かりやすく解説します。後半では、契約前に確認すべき重要なポイントや成功のためのコツも紹介しますので、契約を検討している方はぜひ最後まで読んで参考にしてください。
一括借り上げによる土地活用とは?
土地活用の方法の一つである「一括借り上げ」は、土地や建物を賃貸事業者がまとめて借り上げ、オーナーに一定の賃料を支払うという契約を指します。通常の賃貸管理では、入居者との賃貸契約や家賃の回収、退去時の対応をオーナーが行いますが、一括借り上げでは転貸方式(サブリース方式)で業者と入居者が別途契約を結び、オーナーに代わって業者が管理業務などを行います。
この方式では、空室の有無にかかわらず契約期間中は固定の賃料が支払われるため、オーナーが安定した収入を見込めるのが特徴です。特に、自己管理の手間を減らしたいケースや、相続後の運用方法を簡略化したいケースに向いています。
転貸方式(サブリース方式)と管理委託方式の違い
一括借り上げで行われる転貸方式(サブリース方式)の契約に対し、比較に上るのが管理委託方式の契約です。それぞれの違いは以下の通りです。
- ●転貸方式:
- 業者がオーナーから物件を借り受け、第三者(入居者)に貸し出す方式。オーナーは業者と賃貸借契約を結び、業者は入居者と再度契約する。空室リスクは業者が負担し、オーナーは契約期間中、あらかじめ取り決めた賃料を受け取る
- ●管理委託方式:
- オーナーが入居者との契約主体となり、業者に管理業務のみを委託する方式。家賃回収や入居者対応は業者が行うが、空室リスクや賃料変動リスクはオーナーが負担する
管理委託方式は自由度が高いものの、リスクが伴うため、オーナーとしての収益は変動しやすいです。また管理会社に支払う手数料も発生します。どちらの方式を選ぶかは、収益安定性を優先するか、自由度と収益最大化を目指すかによって異なるでしょう。
契約の流れ
続いて一括借り上げ契約の流れと必要手続きを解説します。
一括借り上げ契約では、まず業者に土地や物件の活用希望を相談します。この段階から、立地や規模、建物の状態などを共有することも多いでしょう。相談を受けた業者は、周辺市場や物件条件を調査します。
調査結果がそろったら、業者から賃料保証額や契約期間、運用計画などの説明を受けます。賃料改定条件や解約条件、原状回復費用の負担などもきちんと確認し、不明点がある場合は、必ず契約前に書面で回答をもらいましょう。
契約内容に合意したら、業者との間で賃貸借契約を締結します。この際、重要事項説明書や契約書のコピー、必要に応じて物件登記簿謄本や本人確認書類、銀行口座情報などが必要です。
契約開始日以降は、業者による入居者募集や管理が始まります。その後、契約に基づき定期的に賃料が振り込まれるでしょう。契約後は、年単位での賃料改定や契約更新のタイミングを把握しておくことが、長期的な安定運営につながります。
一括借り上げのメリット
一括借り上げは、オーナーが賃貸経営で直面するリスクや負担を大幅に軽減できる仕組みです。ここで、代表的な3つのメリットを詳しく見ていきましょう。
安定した賃料収入の確保
一括借り上げの契約期間中は、空室の有無にかかわらず、あらかじめ取り決めた賃料がオーナーへ定期的に支払われます。通常の賃貸経営では入居率の変動によって収入が左右されますが、この仕組みにより収入の安定性が格段に高まります。
特に長期契約の場合、数年間にわたってほぼ一定額の賃料収入を見込めるため、将来の資金計画やローン返済計画を立てやすくなるでしょう。ローンや修繕積立金、固定資産税などの支出に対し、収入の見通しが立つことは大きな安心材料です。また景気や賃貸需要の変動による家賃下落の悪影響を受けにくい点も、メリットの一つです。
管理負担の軽減
一括借り上げ契約では、入居者募集、家賃回収、建物の日常管理、退去時の対応といった煩雑な業務を業者が一括して引き受けます。これにより、オーナーは物件管理にかける時間や労力を大幅に削減できます。特に遠方に住んでいるオーナーや複数の物件を所有しているオーナーの場合、現地での対応や定期点検を業者に任せられ、自らの負担を大幅に軽減させられるでしょう。
さらには、入居者からのクレーム対応や修繕手配といった突発的な業務も業者が代行するため、精神的な負担の軽減にもつながります。副業として賃貸経営を行いたいオーナーや、高齢のオーナーにもおすすめの土地活用方法です。
相続・承継時の利便性
一括借り上げ契約は、相続や事業承継の場面でも有効です。相続人が経営経験を持っていなくても、契約期間中であれば既存の内容に基づいて業者がオーナーへ賃料を支払い、管理業務を継続します。これにより、経営の空白期間を作らずに運営を継続できるでしょう。
また安定した賃料収入は、相続税やその他の納税資金を確保する上でも役立ちます。賃貸経営を維持することによって、更地のままにしておくよりも相続税評価額が下がるケースもあり、税負担の軽減につながる場合があります。家族が複数人で相続した際は、賃料収入を分配できるため、管理や収益分配のトラブルを避けやすくなる点もメリットです。
一括借り上げの代表的なリスク
一括借り上げは安定した収入や管理負担の軽減といった魅力がありますが、冒頭でも触れた通り、契約条件や運用環境によってはリスクも伴います。利用を検討する際はメリットと同時にリスクを十分理解し、契約内容を慎重に確認することが重要です。代表的なリスクを3つご紹介します。
収益が減るリスク
一括借り上げ契約では、契約内容によっては更新時などに賃料が減額される可能性があります。これは周辺の賃貸需要や市場家賃が下落した際、業者が収益確保のために条件変更を求めることがあるからです。契約当初は満室稼働で安定収入を得られていたものの、数年後に入居率が低下し、業者から賃料の大幅減額を求められるようなケースも考えられます。
特に契約書に「賃料改定条項」や「市況変動による見直し規定」の記載がある場合、業者側から減額を提案される可能性が高くなり、オーナーとしては減額を受け入れざるを得なくなるでしょう。契約前に、内容をしっかりと確認しておくことが大切です。
契約解除のリスク
一括借り上げは比較的長期にわたる契約であることが一般的ですが、たとえ契約期間満了前であっても、業者の経営状況や運営方針の変更によって契約解除が行われるリスクはあります。採算が合わなくなった物件や、管理コストが高くなった物件では、業者から一方的に契約解除の申し出が行われることもあるかもしれません。契約が解除されてしまうと、オーナーは自ら入居者募集や管理業務を引き継ぐ必要が出てきます。知識や経験が不十分で管理が行き届かなければ、空室期間が発生して賃料が減る可能性も高まるでしょう。
契約解除の条件や予告期間、契約終了後の引き継ぎ体制についてもきちんと確認しておくことが不可欠です。
契約条件による制約リスク
一括借り上げ契約では、物件の改装や用途変更、賃貸条件の変更などが制限される場合があります。業者の運営方針や入居者募集戦略に沿う必要があるため、オーナーが自由にリフォームや賃料設定を行えないケースが多いのです。
トラブルとなるのは、オーナーが高付加価値のリフォームを希望しているにもかかわらず、業者がコスト増を理由に拒否するケースなどが考えられます。オーナーと業者の経営方針が合わず、賃料設定や入居者層のターゲットがずれているせいで、物件の方向性が定まらないようなこともあり得るでしょう。
契約で禁止されがちな項目には、賃料の自由な値上げや短期貸しや民泊への転用、大規模な間取り変更などが挙げられます。このような制約は、物件の価値向上や収益多様化の可能性を制限するため、こちらも契約前にしっかりと確認しておき、長期的な運営計画との整合性を取ることが重要です。特にリフォーム計画や賃料設定の裁量範囲、入居者募集方針などは具体的に協議し、書面化しておくと良いです。
契約前に確認すべきポイント
リスクの解説でも触れた通り、一括借り上げ契約を結ぶ際は、契約内容のさまざまな項目を十分に確認する必要があります。これらの条件は契約後の収益性や運営の自由度に直結し、後々のトラブルを防ぐための重要な判断材料となるでしょう。
以下では、特に注意すべき3つの確認ポイントを改めて解説します。
賃料保証額と改定条件
賃料保証額は、一括借り上げ契約の基盤となる重要な要素です。契約当初に高い保証額が提示されても、契約更新時や市況変化時に減額される可能性があります。
契約書に「賃料改定条項」や「市況変動による見直し規定」がある場合は、その発動条件や頻度、減額幅の上限を明確に確認しましょう。長期契約では特に、将来の賃料下落リスクを見越して複数年固定の保証条件や、減額幅の制限を交渉することが有効です。
なお契約前に周辺相場を把握し、提示された保証額が妥当かどうかを判断することも重要です。複数社から見積もりを取り、比較検討を行えば、より安定した条件を選びやすくなるはずです。
契約期間と解約条件
契約期間に関する問題は収益の安定性や柔軟性に大きく影響するため、誤解がないよう入念な確認が必要です。長期契約であれば安定収入を確保できますが、市況の好転時に賃料を見直せない可能性があります。一方、短期契約の場合は柔軟な条件変更が可能ですが、更新時に条件が不利になるリスクは避けられません。
また解約条件や通知期限も必ず確認しておきましょう。例えば「契約満了の6カ月前までに書面通知」といった条件がある場合、期限を過ぎると自動更新される場合があります。
さらには中途解約の可否や解約時の違約金、原状回復費用の負担についても、契約書に明記されている箇所を確認しておくことが大切です。特に解約時の負担を巡るトラブルを避けるには、原状回復の範囲と費用負担、計画修繕の発注権限、緊急時の判断基準が明文化されているかを確認しておく必要があります。併せて着工前後の写真を保存しておいたり、仕様書を添付しておいたりすると、将来の交渉がスムーズになるでしょう。
事業者の経営安定性
契約相手となる業者の経営安定性は、長期的な賃料保証の信頼性に直結します。財務状況や経営実績、運営物件の管理状況を調べ、安定して契約を継続できるかを判断しましょう。
具体的には、過去の決算書や業績推移、管理戸数や稼働率、過去のトラブル事例などを確認しておくのがおすすめです。聞いたことのある大手企業であっても、業績悪化や事業方針の変更が起きれば契約条件が改定される可能性があるため、慎重な判断が必要です。実際に契約中のオーナーの評判や口コミを参考にすると、契約後の運営状況をさらにしっかりとイメージできるでしょう。
一括借り上げを成功させるためのコツ
一括借り上げ契約を成功させるには、契約前の比較検討や長期的な運営計画、専門家の知見活用が欠かせません。最後に3つのコツをご紹介します。
複数業者からの見積もりを比較する
一括借り上げ契約は、提示される賃料保証額や契約条件、管理内容が事業者ごとに異なります。そのため契約の際は必ず複数の業者から見積もりを取り、それぞれの条件を比較しましょう。
比較時のポイントは、以下の通りです。
- 保証賃料額と改定条件
- 契約期間と解約条件
- 管理内容の範囲(修繕・クレーム対応・入居者募集など)
- 原状回復や修繕時の費用負担割合
一括査定サービスを利用すれば、複数業者の条件を短期間で比較できます。特に初めて契約する場合は、条件の違いを客観的に把握しやすく、交渉の参考になるでしょう。
なお条件が近い場合でも、管理体制やサポート力は業者によって異なります。数値だけを見るのではなく、実際の運営品質も確認することが大切です。
長期的な運営計画を策定する
契約期間中の安定経営を実現するには、長期的な建物維持計画と資金計画が欠かせません。特に、築年数が経過するにつれて必要となる大規模修繕や設備更新には、多額の費用がかかります。あらかじめ修繕積立金を確保し、計画的に工事を行うことで、資産価値を保ちやすくなります。
また一括借り上げの契約更新時は、賃料改定交渉が発生する可能性があるため、周辺相場や物件の状態を把握しておきましょう。築年数や修繕履歴が良好であれば、減額幅を抑える交渉材料になるはずです。将来的な市況変動や税制改正も想定し、収支シミュレーションを行うことが安定運営への近道です。
専門家へ相談する
不動産鑑定士や弁護士、税理士といった専門家の活用は、一括借り上げ契約の安全性を高める有効な手段と言えます。専門家の助言は契約後の運営にも役立つため、初期段階から積極的に活用することをおすすめします。
不動産鑑定士に相談すれば、物件の適正賃料や資産価値を評価し、交渉材料を提供してもらえるでしょう。契約書や重要事項説明書の内容を法的観点から確認し、リスクの高い条項を指摘してほしいときは、弁護士に依頼する方法もあります。税理士に相談した場合は、賃料収入の税務処理や相続税対策についての助言が期待できます。
また土地活用を総合的に取り扱っている業者に相談すれば、一括借り上げ以外にもさまざまな活用方法を検討でき、どの方法を選ぶべきかの参考にできるでしょう。
まとめ
一括借り上げは、安定収入と管理負担軽減という大きな魅力がありますが、契約条件や運営方針によっては収益性や自由度が制限される場合もあります。成功のカギとなるのは、複数業者から見積もりを受け、比較しながら条件を精査することです。さらには長期的な運営計画を立て、必要に応じて専門家の力を借りることで、リスクを抑えながら安定した経営を目指せるでしょう。
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