今回は、不動産所得の総収入金額の計上額及び計上時期についてです。不動産所得の収入には地代・家賃といった毎月発生するものや臨時的に発生するものがありますが、これらをどの時点でいくら収入金額に計上すべきかをお話ししていきましょう。
まず、地代・家賃の収入金額は、当然のことですが不動産賃貸借契約書に記載されている金額となります。
では、どの時点で収入に計上すべきでしょうか。以下の例でご説明します。
【例1】以下の条件で賃借人Aと不動産賃貸借契約が成立した。
・平成23年7月1日から賃貸借開始とする。
・家賃月額100,000円とする。
・当月分の家賃は前月末日までに家主に送金する。
この場合、平成23年分の家賃収入の考え方には、①入金ベースで収入を計上する考え方と②期間対応で収入を計上する考え方の2つが考えられます。
①入金ベースで収入を計上する考え方
この考え方でいきますと、平成24年1月分の家賃は平成23年12月31日までに入金されることとなりますので、平成23年7月分~平成24年1月分の7ヶ月分の家賃が平成23年分の総収入金額に算入されます。
②期間対応で収入を計上する考え方
この考え方でいきますと、平成23年中に入金がされていても、あくまでも平成24年1月分の家賃であるため、これを平成24年分の収入として処理します。これを「前受経理」といいます。従って、この前受経理をした場合には、平成23年7月分~平成23年12月分の6ヶ月分の家賃が平成23年分の総収入金額に算入されます。
所得税法上、①の考え方を原則としていますが、②の考え方でも差し支えないとしています。
【例2】賃借人Bは平成23年9月分以降、家賃(月額100,000円)の滞納をしており、未収のまま年末を迎えたため、平成23年12月をもって契約を解除した。
この場合、平成23年9月分以降の家賃は未収でも平成23年分の総収入金額に算入しなければなりません。「所得税法第36条」において、「その年分の不動産所得の金額の計算上総収入金額とすべき金額は~中略~その年において収入すべき金額とする。」とあります。
「収入すべき金額」とは、入金の有無にかかわらず、賃借人に家賃を請求できる権利が確定した時点における請求可能金額を意味します。従って、賃貸借契約が存続している期間中(平成23年12月分まで)の家賃は総収入金額に算入することとなります。
尚、その後において滞納家賃が回収不能となった場合には、貸倒損失等の処理が認められています。
【例3】従来月額100,000円の家賃を、平成23年8月分以降月額120,000円に値上げをしたが、賃借人Cはこれに応じず、旧家賃相当額100,000円を法務局に供託し、平成23年12月末においても係争中である。尚、Cとの不動産賃貸借契約は解除していない。
この場合、家主と賃借人との間での賃貸借契約は存続しているため、上記のとおり未収であっても収入に計上しなければなりませんが、この場合には、平成23年8月分以降の家賃は供託金相当額を総収入金額に算入することとなります。係争中とはいえ、賃借人Cは、旧家賃相当額である100,000円は支払う意思があるので、100,000円は入金可能額として確定しているからです。尚、その後において家主と賃借人との間で和解があった場合や判決等により係争が決着した場合には、新家賃と供託金との差額部分を、和解・判決等のあった日の属する年分の総収入金額に算入します。
不動産賃貸借契約締結時に受け取る権利金・礼金等とは以下の性質を有します。
①礼金…主として居住用の賃貸借契約に際して慣行的に賃借人から家主に支払われる一時金であり、家主から賃借人に返還されないもの
②権利金…賃貸借契約の対価として授受されるもので、家主から賃借人に返還されないもの(注)
(注)土地の賃貸借に係る権利金で一定のものは借地権の設定として譲渡所得に該当するものがありますが、今回は割愛します。
③敷 金…家賃滞納等の契約不履行に基づく損害賠償の担保としての性格を有し、賃貸借契約が終了した際には、滞納家賃・退去営繕費等と相殺し、残額を賃借人に返還されるもの
④保証金…賃貸借契約に定められた契約期間の完全履行を保証するための性格を有し、賃貸借契約が終了した際に、契約が完全履行されれば賃借人に返還されるもの
上記のうち、①の礼金と②の権利金は、家主から賃借人に返還がされないものですので、これらは不動産収入として計上することとなります。これらは礼金・権利金の全額を鍵の引き渡しがされた日の属する年分の総収入金額として算入します。
尚、権利金が多額となり、かつ一定の要件に合致する場合には、「平均課税」とよばれる特殊な計算を行い、税負担を緩和させる方法があります。
一方、③の敷金と④の保証金は、賃貸借契約終了時に家主から賃借人に返還がされるものですので、これらは原則として不動産収入として計上せず、預り金として処理します。また賃貸借契約終了時に、敷金保証金から退去営繕費等を差し引いた場合には、賃借人に返還しない部分(差引いた部分)の金額を賃貸借契約終了日の属する年分の総収入金額に算入します。
また、保証金については注意が必要です。不動産賃貸借契約書において、「保証金のうち○○円(又は○○%)は償却する」といった内容が記載されている場合があります。これを「償却金」といいます。この場合、保証金のうち一定額(又は一定割合)は返還不要となりますので、その償却金相当額は②の権利金と同様の取り扱いとなり、契約による返還不要が確定した日の属する年分の総収入金額に算入します。
余談となりますが、平成23年3月24日に、「敷引特約は不当に高額でない限り有効」とする最高裁判決が出されました。「敷引特約」とは、賃借人が退去する際に、賃借人に返還する敷金・保証金から一定額を差し引く旨を定めた特約をいいます。
この「敷引特約」がある場合おいて、下記の条件を満たすときは、家主は実際に退去営繕をするか否かを問わず、賃借人に敷金のうち特約に定める敷引額を差し引いて返還しても差し支えないこととなります。
①敷金から差引く金額が不当に高額でないこと
②差引く金額が、建物に生じる通常損耗の補修費用として通常想定される額、賃料の額、礼金の額等他の一時金の授受の有無及びその額等に照らし合理的根拠があること
その他付帯収入には、色々なものがあります。簡単に言えば、「不動産貸付をしている場合におまけとして入ってくるもの又は支払が割り引かれるもの」をいいます。
例えば、以下のようなものが付帯収入となります。
①固定資産税の前納報奨金
固定資産税の納付方法として、①年額を一括で納付する方法と、②年額を4回に分納する方法があります。年額を一括納付する場合には、4回分納する場合に比べ若干割引がされます。この割引額を「前納報奨金」といいます。この前納報奨金のうち、貸付物件に係る部分は納税通知のあった日の属する年分の不動産所得の総収入金額となります。
(前納報奨金制度は実施をしている自治体と実施していない自治体があります。)
②共益費収入
貸付物件に係る電気代・水道代等の共益費を賃借人から徴収し、貸付物件の電気代・水道代等を支払う場合において、徴収額と支払額に差額が生じるときは、徴収した共益費は徴収した日の属する年分の不動産所得の総収入金額となります。(支払った電気代・水道代等は経費となります。)
③エコポイント
これは最近国税庁のQ&Aに掲載されていましたのでご紹介しておきます。
エコポイントとは、地球温暖化対策、経済の活性化を図るためのグリーン家電の購入・エコ住宅の新築・リフォームを行った場合にポイントが付与され、その後、様々な商品・サービスと交換ができるものをいいます。
ポイントが付与される段階では課税の対象とはなりませんが、そのポイントを使ってエコポイント交換商品を取得し、サービスの提供を受けた時点で課税がされます。
例えば、不動産所得を生ずべき業務の用に供するための資産(アパート・マンションに備付けのエアコン・テレビ等)の購入に伴いポイントが付与され、そのポイントでエコポイント交換商品を取得したときや、エコ住宅である貸付物件の新築やリフォームをしたことに伴いポイントが付与され、そのポイントで、追加工事の費用に充当した場合には、そのエコポイント価額相当額がポイント交換日の属する年分の不動産所得の総収入金額となります。
尚、貸付物件に該当しないものであっても、グリーン家電エコポイントや自宅の新築・リフォームに係る住宅エコポイントを商品に交換した場合には、一時所得として所得税の課税対象となります。
不動産収入のうち特殊なものや臨時的に発生するものは意外と見落としがちとなりますので、上記のような事例がある場合には税理士にご相談ください。