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知って得する税務講座

住宅取得資金の贈与税の非課税制度について

河原 肇税理士

今回のテーマは「住宅取得資金の贈与税の非課税制度」についてです。
経済対策の一環として、平成21年6月に「住宅取得等資金の贈与が500万円非課税制度」が国会で可決され、7月から施行されました。住宅税制については、従来から「所得税の住宅ローン減税の拡大」などの措置が講じられてきました。
今回は期限付きではありますが、贈与税の方面から住宅取得の支援をするようになりました。

1.制度の概要

平成21年1月1日から平成22年12月31日までの間に、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、受贈者(贈与を受ける者)の居住の用に供する住宅用家屋の新築もしくは取得又は増改築等のための金銭(以下「住宅取得資金」といいます。)を取得した場合において、一定の要件を満たすときは、その住宅取得資金のうち500万円までの金額について贈与税が非課税となりました。
今回の制度は「非課税制度」となっているため、贈与税の課税価格・相続税の課税価格を構成しないというのがポイントとなります。
従来の贈与税の制度(以下「暦年贈与課税制度」といいます。)は、贈与税の課税価格から基礎控除額(年間110万円)を超える部分が課税の対象となっていましたが、今回の非課税制度の500万円部分については、贈与税の課税価格に算入されないこととなります。
また、相続時精算課税制度は、特別控除制度(控除額最大2,500万円)及び特定の贈与者からの住宅取得資金の贈与を受けた場合相続時精算課税に係る特別控除制度(控除額最大1,000万円)では、贈与者が死亡した場合には、贈与した住宅取得資金の額を相続税の課税価格の
計算に算入しなければなりませんが、今回の非課税制度の500万円部分については、相続税の課税価格に算入する必要がないので、相続税対策としても効果があると考えられます。

2.他規定との併用

今回の非課税制度は、従来の暦年贈与課税制度・相続時精算課税制度との併用が可能となります。
例えば、暦年贈与課税制度との併用の場合、非課税額500万円と、基礎控除額110万円の併せて610万円までの贈与について贈与税がかからないこととなります。
また、相続時精算課税制度との併用の場合には、非課税額500万円と、特別控除3,500万円(住宅取得等資金特例1,000万円を含みます。)の併せて4,000万円までの贈与について贈与税がかからないこととなります(但し、相続時精算課税の場合には、従来の特別控除3,500万円は相続税の課税対象に算入されます)。
すでに相続時精算課税制度の適用を受けている場合、今回の非課税制度を適用した上で、500万円を超える部分について相続時精算課税制度の適用を受けることになります。

3.受贈者の要件

今回の非課税制度の対象となる受贈者の要件は以下の通りです。
①贈与を受けた時に日本国内に住所を有していること
※但し、贈与を受けた時に日本国内に住所を有していなくても、次の(イ)及び(ロ)に該当する場合は対象となります。
(イ)贈与を受けた時に日本国籍を有していること
(ロ)受贈者又は贈与者がその贈与前5年以内に日本国内に住所を有したことがあること
②贈与を受けた時に贈与者の直系卑属であること
③贈与を受けた年の1月1日において20歳以上であること
④贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得資金の全額をもって住宅用の家屋の新築もしくは取得又は一定の増改築等をすること
⑤贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住すること、又は同日後遅滞なくその家屋に居住することが確実であると見込まれること
※贈与を受けた年の翌年12月31日までにその家屋に居住していない場合には、非課税制度は適用されず、修正申告をして贈与税を納付することとなります。
上記の要件で注目すべき点は、②の贈与者の範囲です。
従来の相続時精算課税による特別控除制度(控除額最大2,500万円)及び特定の贈与者からの住宅取得資金の贈与を受けた場合相続時精算課税に係る特別控除制度(控除額最大1,000万円)では、原則として父母からの贈与に限られていましたが、今回の非課税制度については贈与者の直系卑属となっていますので、親から子への贈与のみならず、祖父母から孫への贈与・曾祖父母から曾孫への贈与であっても非課税制度の対象となります。
また、養子縁組をした養親も贈与者の対象に含まれています。

4.対象となる家屋等

今回の非課税制度の対象となる住宅用の家屋の新築もしくは取得又は増改築等の要件は以下の通りです。
Ⅰ新築又は取得の場合の要件
①新築又は取得した住宅用家屋の登記簿上の床面積(マンション等の区分所有建物の場合は、その専有部分の床面積)が50㎡以上で、かつ、その家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が受贈者の居住の用に供されるものであること。
②取得した住宅が次のいずれかに該当すること。
(イ)建築後使用されたことのないもの(いわゆる新築家屋)
(ロ)建築後使用されたことのあるもの(いわゆる中古家屋)で、その取得の日以前20年以内(耐火建築物の場合は25年以内)に建築されたもの
※耐火建築物とは、鉄骨造、鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造などの建築物をいいます。
③建築後使用されたことのあるもので、地震に対する安全性に係る基準に適するものとして「耐震基準適合証
明書」等により証明されたもの。
Ⅱ増改築等の場合の要件
①増改築後の住宅用家屋の登記簿上の床面積(マンション等の区分所有建物の場合は、その専有部分の床面積)が50㎡以上で、かつ、その家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が受贈者の居住の用に供されるものであること。
②増改築等の工事が、自己が所有し、かつ居住している家屋に対して行ったもので、一定の工事に該当するこ
とにつき「増改築等工事証明書」等により証明がされたものであること。
③増改築等の工事に要した費用の額が、100万円以上であること。
Ⅲ 家屋の敷地となる土地等の要件
上記のⅠ・Ⅱの「新築」もしくは「取得」又は「増改築等」とともに取得する敷地の用に供する土地等の取得も含まれてきます(土地の単体取得の場合は除外されます)。

5.注意事項

住宅取得資金の贈与税の非課税の適用を受ける際には、以下の点について注意が必要となります。
①今回の非課税制度は、平成21年1月1日から平成22年12月31日までの2暦年の間に、贈与により取得した住宅取得資金について、受贈者1人につき500万円が限度となります。
従って、父母から各々500万円(計1,000万円)の贈与を受けるとすると、そのうち500万円のみが非課税制度の適用を受けることとなり、残りの500万円は従来の暦年
贈与課税制度または相続時精算課税制度の対象となります。
②今回の非課税制度は、住宅用家屋の新築もしくは取得又は増改築等の為に贈与を受けた金銭が対象となりますので、住宅用家屋そのものの贈与は非課税の対象から除外されます。
③今回の非課税制度の贈与者は受贈者の直系尊属(父母・養親・祖父母・曽祖父母等)に限られています。従って、配偶者の父母・祖父母等からの贈与により取得した住宅取得資金の贈与は非課税の対象から除外されます(尚、住宅取得の際に配偶者名義で登記すれば、配偶者で非課税の適用は可能となります)。
④今回の非課税制度を受ける場合には、たとえ納税額が無い場合であっても、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に贈与税の申告をする必要があります。贈与税の申告がされていない場合には、従来の暦年贈与課税制度として扱われ、贈与税を納付することとなります。

6.シミュレーション

今回の非課税制度と暦年贈与課税制度を活用した住宅取得資金の贈与例をご紹介しましょう。
【例1】
夫婦が両方の直系尊属からそれぞれ非課税枠の500万円(計1,000万円)と、暦年贈与課税制度の基礎控除額の110万円(計220万円)の贈与を受けます。
これで、贈与税の負担なしで1,220万円(夫610万円・妻610万円)の資金移動が可能となります。
【例2】
夫婦が両方の直系尊属からそれぞれ非課税枠の500万円(計1,000万円)と、暦年贈与課税制度の最低税率10%課税の上限額310万円(計620万円)の贈与を受け、贈与税申告をして贈与税20万円(計40万円)を納付します。
※暦年贈与課税額(310万円-110万円)×10%=20万円
これで、1,620万円(夫810万円・妻810万円)の贈与で、40万円の贈与税(夫20万円・妻20万円)ですので、実質1,580万円の資金移動となります。贈与税負担は発生しますが、実効税率は約2.469%(40万円÷1,620万円)ですので、効率のいい資金移動になると考えられます。また【例1】に比べ360万円も多く住宅取得資金を移動することができます。

7.最後に

この非課税制度は贈与税の申告書の他に所定の添付書類・手続きが必要となります。この適用を受けようとする方は、あらかじめ税理士にご相談ください。

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